1989 Fiscal Year Annual Research Report
アブラムシ共生細菌の生産する抗菌物質の分離・同定ならびに薬効の検討
Project/Area Number |
01840028
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Research Category |
Grant-in-Aid for Developmental Scientific Research
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
石川 統 東京大学, 理学部, 教授 (70012482)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
入野 信人 日本メクトロン株式会社, 研究主任
山下 哲郎 東京大学, 理学部, 助手 (20202377)
川口 昭彦 東京大学, 教養学部, 教授 (80013332)
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Keywords | アブラムシ / 腸内細菌 / Staphylococcus / 抗真菌活性 / 菌糸伸長阻害 / イモチ病菌 / ウリ類ツル枯病菌 / ダイズ紫斑病菌 |
Research Abstract |
今年度の研究ならびに結果の大略は以下のとおりである。 1.従来から実験室において継代飼育してきたエンドウヒゲナガアブラムシの甘露から採取、培養したグラム陽性細菌の基礎的性質を調べた。ガスクロマトグラフィ-/マススペクトロコピ-法により、当腸内細菌細胞壁の脂肪酸組成を調べたところ、C15:0分枝形がメインピ-クを形成した。また、この菌は60度30分の処理には耐えず、耐熱性を示さなかった。さらに、ゲノムDNAの塩基組成分析から、そのGC含量は約32%であった。これらの結果から、当腸内細菌はStaphylococcusに近縁なものと推察された。 2.当腸内細菌の培養上清を凍結乾燥し、20倍に濃縮した液について、阻止円形成法によって抗細菌活性を予備的に調べた。この結果は枯草菌および大腸菌に対してはネガティブであった。しかし、アブラムシの甘露そのものは濃縮前でも、とくに大腸菌に対して、強い増殖阻害効果を示した。 3.ポテトデキストロ-スを主成分とする、真菌類培地に、当細菌の培養上清を添加し、菌糸伸長阻害を指標として、さまざまな真菌類への作用を調べた。その結果、当腸内細菌はイモチ病菌、ウリ類ツル枯病菌、ダイズ紫斑病菌およびビ-ト褐斑病菌にきわめて強く、灰色かび病菌に中程度に増殖阻害効果をもつ物質を、菌体外に分泌することが明かになった。カンキツ黒点病菌、ゴマハガレ病菌およびジャガイモ疫病菌に対しては無効であった。 4.有機溶媒に対する、予備的な分配実験の結果からは、有効物質の本体はオリゴペプチドである可能性が示唆された。
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