1990 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
01850153
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
松原 秀彰 東京大学, 先端科学技術研究センター, 講師 (90167651)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
渋木 邦夫 東芝タンガロイ(株), 工具本部・工具開発部, 部長
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Keywords | ダイヤモンド / CVD / コ-ティング / 気相合成 / 工具材料 / 硬質材料 / 密着強度 / 残留応力 |
Research Abstract |
本研究では、ダイヤモンド気相合成を利用した新しい硬質材料の開発を目的に、昨年度は各種の基板上に膜状のダイヤモンドが均質に形成されるような合成条件、基板の表面処理条件などの検討を行い、さらに本年度は、被覆したダイヤモンド膜の残留応力、密着強度などを検討した。 基板材料としては、Si_3N_4、SiC、WC、TiC、Al_2O_3のセラミックス、WCーCo、Ti(C,N)ーNiのサ-メット、Co、Niの金属を用いた。合成処理はTaCフィラメントを用いた熱CVD装置によって行い、合成処理後の膜の剥離状況の観察、X線による残留応力測定、圧下試験および圧縮試験による密着強度の評価を行った。 基板を約900℃に加熱しながら最大10μm厚さのダイヤモンド膜を合成した後冷却した時の剥離現象を観察した結果、TiC、Ti(C,N)ーNi、Al_2O_3、Co、Ni基板では被膜厚さが1〜2μmでも被膜が剥離し、SiC、WC、WCーCo基板では約8μm以上で剥離が認められたが、Si_3N_4でま膜は剥離しないことが分かった。そして膜が剥離しやすかった基板は熱膨張係数が大きい物質であることが分かった。さらに、Si_3N_4、SiC、WC、WCーCo基板について被膜(5μm)中の残留応力をX線により測定したところ、いずれも圧縮応力が測定され、その大きさは、Si_3N_4<SiC<WC<WCーCoの順となりまた熱応力の計算値とほぼ一致した。さらに、被膜の密着強度を圧下試験および圧縮試験により評価すると、残留応力の最も小さかったSi_3N_4基板でダイヤモンドの密着強度が最も優れることが明らかとなった。さらに本研究では密着強度におよぼす基板表面の加工状態の影響を調べ、基板表面に凹凸を施すとダイヤモンド膜の機械的保持により密着強度が改善されることを示した。以上、本年度の研究では、ダイヤモンド膜の密着強度を改良することには、ダイヤモンドと熱膨張係数差が小さい基板を用い、表面に凹凸処理を施すことが重要であることを明らかにした。
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