腹部内臓全移植の研究

1991 Fiscal Year Annual Research Report

• Project/Area Number: 01870056
• Research Institution: MIE University
• Principal Investigator: 水本 龍二 三重大学, 医学部, 教授 (00025561)
• Co-Investigator(Kenkyū-buntansha): 横井 一 三重大学, 医学部附属病院, 講師 (60174843) ; 野口 孝 三重大学, 医学部, 助教授 (40144258) ; 川原田 嘉文 三重大学, 医療技術短期大学部, 教授 (40024814)
• Keywords: 肝膵同時移植 / 肝膵相関 / 移植片viability / エネルギ-代謝動態 / アミノ酸代謝 / 糖代謝 / 膵島ホルモン / 免疫拒絶反応

Research Abstract

消化器疾患では多臓器がともに不可逆的状態に陥入っている症例が少なくなく、その根治的治療には腹部内臓全移植あるいは腹部の複数臓器の移植が必要となるが、特に代謝の中枢である肝及び膵の同時移植が適応となる症例も少なくない。本研究は、実験的に雑種成犬を用い、肝膵同時移植の手術手技の確立と術中術後管理を詳細に検討するとともに、臓器相関の立場から肝機能や膵内外分泌機能の病態と拒絶反応などの免疫学的な面について検討することを目的とし、全肝全膵同時移植群と肝移植のみの群や膵十二指腸移植のみの群とを対比し、以下の結果を得た。1.手術手技上の問題点:ドナ-グラフトの潅流液(4℃リンゲル液)は80〜100ml/kg/時がよく、またレシピエント手術での血流再開は動脈からはじめ、術中術後輸液量は低分子デキストラン20〜30ml/kg/時が適切である。2.2日及び7日生存率:各群とも免疫抑制剤を投与しなかったが生存率はそれぞれ肝膵同時移植群(n=8)50%、38%、肝移植群(n=6)67%、50%、膵移植群(n=5)80%、60%でいずれも拒絶反応の発現は5日以降であった。3.移植肝機能とエネルギ-代謝動態:各群とも一般肝機能は術後1〜5日目の早期に術前値に回復したが、死亡例と生存例で有意差はなかったのに対し、再潅流3時間目の動脈血中ケトン体比や血中アミノ酸分画の成績は予後とよく相関した。さらに間接熱量計にて測定した安静時エネルギ-消費量は再潅流30分目の成績が予後をよく反映し、また呼吸商の推移は、肝あるいは膵単独移植群に比し有意に高値を示し、インスリン分泌動態との相関が認められた。4.糖代謝と膵島ホルモン:肝膵移植後の特徴的な変化は、再潅流直後と拒絶反応の発現する術後5日目以降に認められたが、前者は移植膵機能のviabiltyの回復度に依存して膵島ホルモン分泌の低下と肝障害の関与を認め、後者では拒絶反応の程度に依存した膵内分泌機能異常で膵単独移植で変化が著明であった。

Research Products

• [Publications] 水本 龍二: "肝移植の是非" 総合臨床. 34. 343-347 (1985)
• [Publications] 水本 龍二: "肝臓外科に憶う-過去、現在、将来" 日外会誌. 87. 1499-1502 (1986)
• [Publications] 水本 龍二: "臨床医学の展望-肝、胆道、膵外科" 日本医事新報. 3380. 15-21 (1989)
• [Publications] 水本 龍二: "肝臓外科における手術危険度と手術適応の拡大" 日消外会誌. 23. 2175-2184 (1990)
• [Publications] 川原田 嘉文: "肝膵同時大量切除における基礎的並びに臨床的検討" 日外会誌. 91. 1256-1259 (1990)
• [Publications] 野口 孝: "消化器外科手術後多臓器不全発生例の病態と対策特に肝不全合併例を中心として" 日本外科系連合学会誌. 21. 136-139 (1990)
• [Publications] 水本 龍二: "臨床肝臓病学「肝切除術」" 朝倉書店, 8 (1989)
• [Publications] 水本 龍二: "臨床生理学シリ-ズ「肝移植の展望」" 南江堂, 9 (1990)