1990 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
01880013
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Research Category |
Grant-in-Aid for Developmental Scientific Research (B).
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Research Institution | Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
鈴木 邦夫 理化学研究所, 動物細胞システム研究室, 副主任研究員 (60100054)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
光岡 知足 理化学研究所, フロンテイア研究システム, チームリーダー
水谷 武夫 理化学研究所, 動物試験室, 室長
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Research Abstract |
乳癌の発生は近年日本において急増しており,その発癌因子および発癌過程の究明が急がれている.この研究はマウスの乳腺上皮細胞の無血清培養法を用いて,化学発癌物質と乳腺分化ホルモンを組み合せ投与して前癌状態および癌化の過程を再現し,動物を用いる乳腺発癌実験の代替と乳腺発癌物質の特異的検索法を確立することを目的とした.初年度は,乳癌イニシエ-タ-の特異的検索法の開発を行い,マウス乳腺の初代培養細胞に乳腺を標的とする化学発癌物質を添加すると小核が用量反応的に出現することを明らかにした. 平成2年度は,乳腺発癌物質および非乳腺発癌物質の種類をそれぞれ増やして小核出現の特異性を調べ,乳癌イニシエ-タ-の特異的検出のためのin vitro小核試験の確立を試みた.マウス乳腺の初代培養細胞における小核の出現は,乳腺発癌物質のN__ーーmethylーN__ーーnitrosourea(MNU),7,12ーdimethylbenz[a]anthracene(DM__ーBA),2ーacetaminoflurene,20ーmethylーcholanthreneおよびN__ーーbutylーN__ーーnitrosoureaはいずれも用量反応的に陽性を示した.これに反して,非乳腺発癌物質のbenzo[a]pyrene,1,2ーdimethylhydrazine,N__ーーnitrosodimethylamineおよび4ーnitroquinoline 1ーoxideは陰性または弱陽性を示し,比較的特異性がみられた.以上の結果は,無血清培養システムを用いたマウス乳腺上皮細胞の小核の出現を定量することによってヒト乳癌のイニシエ-タ-の検索が可能であることを示している.一方,培養細胞における癌化の過程を調べるため,プロラクチンを加えた培地にマウス乳腺細胞を培養し,乳腺発癌物質のDMBAおよびMNUを3週間感作し,その後8週間培養を続けたがトランスフォ-ムした細胞の出現はみられなかった.この発癌物質イニシエ-ションされた細胞のマウス乳腺の脂肪組織内における分化と癌化の有無を調べるため,現在移植実験を準備中である.
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