2002 Fiscal Year Annual Research Report
柔構造有機分子膜の電子的構造とMDC-SHG発生に関する理論
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01F00211
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
岩本 光正 東京工業大学, 大学院・理工学研究科, 教授
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
ZHOU X. 東京工業大学, 大学院・理工学研究科, 外国人特別研究員
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Keywords | カーボンナノチューブ / DNA / 熱伝導 / 1次元系 |
Research Abstract |
単分子膜のMDCとSHGは、周(Zhou)さんにとっては始めての研究領域であることから、来日直後は、研究室での文献や研究すべきテーマについて検討した。その後、単分子膜は低次元物質であることから、一次元から2次元へと研究を進めることが、実施しやすいとの考えにいたった。そこで、2年間の研究を下記のような3段階で進めることにした。 1段階目:一次元物質を扱うための理論的考察。 2段階目:カーボンナノチューブ,DNAなどの物性を1次元あるいは2次元モデルを用いて扱うための理論の構築 3段階目:単分子膜を2次元物質として扱い、SHGとMDCとの関連性を明確にする。 そこで、今年度は、一次元物質について中心に研究を行い、下記のような成果を得た。 1.1次元物質の平衡および非平衡状態の物性 (1)最近の研究によると、一次元系の物質については、熱平衡に到達しない場合があることが、計算シミュレーションで明らかになっている。そこで、統計物理の立場から、これを扱うための解析を進めた。その結果、無秩序な結合定数で結ばれた調和振動系を考えるとき、非熱平衡状態になり得ることを証明できた。 (2)この研究をさらに発展させ、1次元系の粒子の挙動と異常な熱伝導現象の関係について、S-行列に基づく理論を用いてこれを更に発展させた。 2 1次元モデルを用いたカーボンナノチューブ内の水分子の挙動について (1)で述べた1次元系の解析を基礎として、カーボンナノチューブ中の分子の挙動が解析できることを見出した。従来は分子動力学的な立場からの計算ミュレーションが大部分であったが、今回は、カーボンナノチューブの内径が水分子サイズにほぼ匹敵することに着目して、一次元モデルを採用する方法を考案した。そして、カーボンナノチューブを通過する水分子の挙動を理論的に考察し、考案した一次元モデルが、これまでの分子動力学のシミュレーション結果を再現するものであることを示すことができた。
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