2002 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
01J00598
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
坂口 幸弘 大阪大学, 人間科学研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | 死別 / 対処(コーピング) / 喪失に対する意味了解 / 精神的健康 / 心の準備 / 遺族ケア / 質問紙調査 / ホスピス |
Research Abstract |
今年度、遺族による死別への対処(コーピング)の構造を解明するため、その一側面である「喪失に対する意味了解(making sense of loss)」に焦点を当て、実証的検討を行った。対象は、大阪府内のホスピスにて1999年1月から1999年12月の間に、癌のために亡くなった患者の近親者144名である。故人との続柄は、故人から見て、配偶者が74名、子どもが70名であった。性別は男性53名、女性91名、平均年齢は47.6歳であった。今回の調査では、喪失に対する意味了解に関する尺度項目として、「私は、故人の死をどうしても納得できないでいる」と「故人の死はあまりにも理不尽だと思う」の2項目を設定した。また、故人の死に対する心の準備に関する項目や、GHQ日本版の28項目短縮版についても回答を求めた。主な結果は以下の通りである。(1)喪失に対する意味了解に関する2項目の回答割合の平均を算出すると、回答者の37.5%が「全くそう思わない」もしくは「あまりそう思わない」と回答していた。喪失に対する意味了解に関する尺度項目の信頼性に関しては、信頼性係数がα=0.80であり、十分な内的一貫性が認められた。(2)「故人との続柄」「性別」「死別からの経過期間」のいずれに関しても、「喪失に対する意味了解」との有意な関連性は認められなかった。(3)「故人享年」「宗教の有無」「心の準備」のいずれからも「喪失に対する意味了解」に対し、有意な正のパスが認められた。すなわち、故人が高齢であった遺族、宗教を持っている遺族、心の準備ができていた遺族ほど、喪失に対する意味了解ができていた。また、「喪失に対する意味了解」から「精神的不健康」への有意な負のパスが認められ、喪失に対する意味了解ができている人ほど、精神的健康の状態が良好であることが明らかにされた。今回の結果から、今回作成した喪失に対する意味了解に関する尺度項目は、十分な信頼性と妥当性を備えた尺度であると考えられる。本研究の知見は遺族の心理過程に関する援助者の理解を深め、遺族の心理状態を把握する上での一助となると思われる。
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[Publications] 坂口幸弘: "遺族の感情表出が精神的健康に及ぼす影響-感情表出は本当に有効な対処方法なのか?"死の臨床. 25(1). 58-63 (2002)
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[Publications] 坂口幸弘: "死別後の心理的プロセスにおける意味の役割-有益性発見に関する検討-"心理学研究. 73(3). 275-280 (2002)
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[Publications] 坂口幸弘: "配偶者喪失者における過去への肯定的-否定的評価と精神的健康との関連"心理学研究. 73(5). 425-430 (2002)
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[Publications] 坂口幸弘: "ホスピス入院患者の一時外泊と遺族の心理的適応との関係"緩和医療学. 5(1). 48-53 (2003)
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[Publications] 坂口幸弘: "末期がん患者のホスピス入院期間と急変による死が遺族の精神的健康に及ぼす影響"ターミナルケア. (印刷中). (2003)
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[Publications] 坂口幸弘: "ホスピスにおける遺族への教育的介入の試み"ターミナルケア. (印刷中). (2003)
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[Publications] 坂口幸弘(共著): "妻を亡くしたとき読む本"出版文化社. 255 (2002)