2002 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
01J02098
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Research Institution | National Institute of Genetics |
Principal Investigator |
廣瀬 慎美子 国立遺伝学研究所, 個体遺伝研究系, 特別研究員(PD)
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Keywords | ヒドラ / ペプチド性シグナル分子 / 神経伝達 / nAChR遺伝子 / 形態形成 |
Research Abstract |
ヒドラの神経伝達にかかわるペプチド分子を得るため、ペプチドの組織的単離を行った。同時に、ヒドラの神経伝達はpeptidergicであるという、これまでの定説と合わない意外な発見をしたので、本研究計画に当初はなかったヒドラにおけるコリナージックシステムの可能性についての解析も行った。 1.ヒドラペプチドの精製:既に第1段階のHPLCで得ているヒドラペプチド15画分中、第7画分の精製をHPLCを用いて進めた。3-5段の精製を経て、約60のペプチドを単離し、25種についてアミノ酸配列分析、質量分析を行った。これらの生物活性検定は進行中である。 2.ヒドラコリナージックシステムの解析:ヒドラを含む腔腸動物では神経伝達はアミン類やアセチルコリン(ACh)のようないわゆる古典的伝達物質ではなくペプチドが担っているというのが定説である。ところが私たちはヒドラにニコチン性アセチルコリン受容体遺伝子(nAChR)およびコリントラスポーター遺伝子(CHT)が存在することを見いだした。1種類のnAChRとCHT遺伝子の発現をホールマウントin situハイブリダイゼーション法で解析した結果,両遺伝子とも触手および出芽体の触手形成部位と体幹ほぼ全域の外胚葉上皮組織でシグナルが検出されたが,神経での発現は見られなかった.神経を全く持たない上皮ヒドラでも正常ヒドラと同じ部位で発現が見られた.また,正常ヒドラの頭部再生過程での遺伝子発現を調べると,再生部外胚葉上皮(触手形成域)で発現が見られた.このことはヒドラはAChを利用しているが神経系での利用ではなく,上皮組織において形態の形成・維持などのシグナルとして利用していることを示唆している.AChが神経系を持ち始めた最初の動物である腔腸動物で形態形成にかかわるとすると、神経伝達物質の進化に全く新しいパラダイムを導入することになる。
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