2003 Fiscal Year Annual Research Report
劣悪地で生育するイネ科およびマメ科植物個体群が維持している多様性とその生態的意義
Project/Area Number |
01J04129
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Research Institution | Saga University |
Principal Investigator |
保田 謙太郎 佐賀大学, 海浜台地生物環境研究センター, 特別研究員(PD)
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Keywords | イネ科植物 / マメ科植物 / 人為攪乱 / 遺伝的多様性 / 植生回復 / 海浜台地 / チガヤ / ハマエンドウ |
Research Abstract |
本研究の目的は,海に面した台地や砂浜などの劣悪地に生育するイネ科やマメ科の資源植物を用い,それらの保有する多様性と生態環境との相互関係を明らかにし,水の乏しい台地や砂漠などの場での植生回復方法を確立することである。本年度は,自生地での生態調査を完結するとともに,台地の農耕地周辺のチガヤの遺伝的多様性を核および葉緑体DNAマーカを用いて解析し,遺伝的多様性と生態環境との相互関係を調べた。 1.台地の農耕地周辺では除草機や除草剤を用いた除草(一年間に2〜5回)が大きな外的圧力に,一方,海岸では塩分を含んだ風や乾燥が大きな外的圧力になってチガヤやハマエンドウの個体群動態と生育に影響を及ぼしていた。 2.20メートルの範囲内から収集したチガヤ株の中に異なる葉緑体DNAタイプと核遺伝子型を持つ個体が存在した。また,核遺伝子も高いヘテロ接合性を示し,チガヤは集団内に高い遺伝的多様性を有していた。台地の農耕地周辺のチガヤは,その高い遺伝的多様性によって,不確定な人為的攪乱や環境ストレスに適応し,個体群を維持していると考えられた。 3.チガヤのように高い遺伝的多様性を有していると考えられる多年生のイネ科植物によって植生回復を行うには,十分な遺伝的多様性を有した集団を現地に再生する必要がある。そのためには,多くの個体から種子を収集する。さらに,その種子から出芽させた実生を現地に移植する。この手順によって植生再生の材料となる植物を供給するのがもっとも適した方法であると考えられた。 この成果は,2003年8月の九州雑草防除研究会で口頭発表し,また,2004年4月に行われる日本雑草学会でポスター発表する。
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[Publications] 保田謙太郎: "日本産チガヤ(Imperata cylindrica)の葉緑体DNA変異の地理的分布"Coastal Bioenvironment (佐賀大学海浜台地生物環境研究センター報告書). 2巻. 51-58 (2003)
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[Publications] 保田謙太郎: "チガヤ(Imperata cylindrica)の葉緑体ゲノムの非コード領域に存在する塩基置換および挿入欠失パターンのPCR-RFLP法による識別"Coastal Bioenvironment (佐賀大学海浜台地生物環境研究センター報告書). 2巻. 59-66 (2003)
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[Publications] 保田謙太郎: "在来植物を用いた植生回復への分子生態学的アプローチ-チガヤを事例に-"九州の雑草(九州雑草防除研究会). 33巻. 9-14 (2003)