2002 Fiscal Year Annual Research Report
離散可積分系の持つ数理構造の解明と、その応用に関する研究
Project/Area Number |
01J05002
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
山崎 玲 (井上 玲) 東京大学, 大学院・総合文化研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | 離散可積分系 / ヤコビ多様体 / Lax行列 / ソリトン方程式 |
Research Abstract |
有限次元古典可積分系がスペクトルパラメータを持つLax形式で記述されるとき、Lax行列(あるいは転送行列)の固有方程式は代数曲線を定める。系の時間発展をこのJacobi多様体上で見ると直線運動になることが知られている。解けるコマはこの有名な例である。近年、様々な離散可積分系に対応する多様体の構造、系の初期値空間、理論全体の拡張が研究されている。Beauvilleは、ある正方行列のゲージ同値類と同型なアフィンJacobi多様体があり、多様体上にはその種数gと同数の不変ベクトル場があること、そして行列が記述する力学系のg個の可換な時間発展を生成することを示した。またSmirnovらは、古典Yang-Baxter方程式を満たす転送行列からこのゲージ同値類の代表元の実現を構成した。本研究では、周期的境界条件を持つ"拡張されたLotka-Volterra方程式"をこのような側面から調べ、モデルの可解性について考察した。 まず、拡張されたLotka-Volterra方程式の転送行列からSmirnovらの構成した代表元を構成でき、しかもこの代表元の成すPoisson括弧代数はモデルの力学変数が満たすPoisson括弧代数A_<LV>に含まれることを示した(*)。固有ベクトル写像はSklyaninの変数分離法によって定められるが、代表元はスペクトル曲線上のg次の因子に写され、ここまでの構成からこの写像は同型になる。因子の時間発展はアフィンJacobi多様体上で線型化され、Jacobiのテータ関数で表される。(*)により得られる因子と力学変数とのg個の関係式、g個の独立な保存量、A_<LV>の中心を生成する自明な保存量から、モデルの自由度を完全に記述できることが分かる。2002年5月から6月にかけてオランダのユトレヒト大学に滞在し、この問題の基本的な部分の研究を進めた。 なお、日本数学会秋季総合分科会(2002年9月、島根大学)、研究集会「非線形波動および非線形力学系に関する最近の話題」(2002年11月、九州大学)で上記の成果について発表した。
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[Publications] Rei Inoue: "The lattice Toda field theory for simple Lie algebras"Contemporary Mathematics, AMS. 309. 115-128 (2002)
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[Publications] Rei Inoue: "The extended Lotlea-Volterra lattice and affine Jacobi varieties of spectral curves"Journal of Mathematical Physics. 44. 338-351 (2003)