2002 Fiscal Year Annual Research Report
環境化学物質による胎仔毒性・催奇形性の発現機序に関する基礎的研究
Project/Area Number |
01J06455
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
片山 圭一 東京大学, 大学院・農学生命科学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | アポトーシス / 細胞周期停止 / p53 / 胎仔 / 神経幹細胞 / 胎盤 / 始原生殖細胞 / 発生 |
Research Abstract |
これまでにEthylnitrosourea(ENU)はラット胎仔の中枢神経組織や胎盤などにアポトーシスおよび細胞周期停止を誘発し,その後,当該器官において奇形の発生が高率に認められること,および,ENU誘発アポトーシスおよび細胞周期停止にはp53蛋白が重要な役割を果たしていることを明らかにしている。 今年度は,ENUによって誘発されたラット胎仔の生殖巣の始原生殖細胞におけるアポトーシス病変について検索した。ENUは始原生殖細胞にもアポトーシスを誘発し,さらに,その際にも胎仔組織や胎盤と同様にp53蛋白が重要な役割を果たしていることを明らかにした。また,本研究の結果を国際学術誌である「Experimental and Toxicologic Pathology」誌に投稿した。 また,ラット胎仔中枢神経組織においてENUによってアポトーシスが誘導される際の細胞周期の変化について検索したところ,アポトーシス細胞の増加に先立ってS期の細胞が増加し,その後アポトーシス細胞が増加するに伴ってG2/M期の細胞が減少することが明らかになった。さらに,S期の細胞が増加する際にG1/S期移行を担う因子が活性化していないことおよびENUの投与により増加したS期の細胞はDNAの複製が遅延または停止していることも明らかにした。すなわち,本実験でみられたS期の細胞の増加はG1/S期移行が亢進したために起こったものではなく,S期にて細胞周期が遅延または停止したために起こったものであることが明らかとなった。以上より,ENUはS期の細胞のDNA複製を阻害し,その後G2期を向かえる前にアポトーシスを誘導しているのではないかと考え,さらなる検索を行っている。
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