2003 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
01J09832
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Research Institution | Fisheries Research Agency |
Principal Investigator |
児玉 真史 独立行政法人水産総合研究センター, 中央水産研究所・海洋生産部, 特別研究員(PD)
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Keywords | 干潟 / 河川負荷変動 / 赤潮 / シリカ欠損 / 浮泥 |
Research Abstract |
・矢作川周辺の環境調査 知多湾へ流入する矢作川の下流定点および上流のダム湖にクロロフィル・濁度計を係留し,クロロフィルおよび濁度の連続観測を行うと同時に,栄養塩,懸濁物,植物プランクトン組成等についても採水調査によるモニタリングを行った。これらのモニタリング結果から矢作川流域および知多湾のシリカ欠損について検討した結果:(1)知多湾において10μm以下の小型の植物プランクトン(主に非珪藻類)が卓越する期間と矢作川からの流入負荷の溶存態シリカ/窒素比(DSi/DIN比)が極端に低下する期間の間に明瞭な対応が認められた。(2)矢作川からの負荷のDSi/DIN比はモニタリング期間平均(原子比)で2.34と低く,時期によってはシリカ欠損が進んでいる可能性が示唆された。この原因として上流のダム湖での珪藻類の増殖による珪酸塩の消費と下流での窒素負荷の増大が影響しているものと考えられた。(3)冬季などに低流量が継続する期間には日周変動を伴いながらクロロフィルa濃度が増加する現象が観測された。(4)クロロフィルa濃度の増加率と流量の関係から,ダム湖におけるクロロフィル増殖に対する限界の流量を明らかにした。 ・有明海湾奥部の環境調査 干潟を有する重要な海域として有明海湾奥部を対象とし,クロロフィルおよび濁度の連続観測データを用いて有明海の筑後川河口干潟域における冬季の赤潮に浮泥が及ぼす影響について解析を行った。その結果,クロロフィル蛍光強度は小潮から大潮にかけて増大し,透明度の低下する大潮時以降は安定または減少する傾向が認められた。このことから干潟浅海域における植物プランクトンの消長には潮汐による濁度の変動が特に光環境の面で大きな影響を及ぼしていることが明らかとなった。
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[Publications] 阿部 淳, 松永信博, 児玉真史, 徳永貴久, 安田秀一: "有明海西部海域における高濁度層の形成と酸素消費過程"海岸工学論文集. 50巻. 966-970 (2003)
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[Publications] 徳永貴久, 児玉真史, 松永信博: "干潟の底生生態系が水質環境に及ぼす影響評価"海岸工学論文集. 50巻. 1076-1080 (2003)
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[Publications] 工藤教勇, 児玉真史, 徳永貴久, 松永信博: "干潟におけるアオサの消長が生物生息環境に及ぼす影響"海岸工学論文集. 50巻. 1081-1085 (2003)
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[Publications] 田中勝久, 児玉真史, 熊谷香, 藤本尚伸: "有明海筑後川河口域における冬季のクロロフィル蛍光と濁度変動"海の研究. 13巻2号. 163-172 (2004)
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[Publications] 児玉真史, 田中勝久, 澤田知希, 都築 基, 柳澤豊重: "河川水中におけるコロイドリンの動態"水工学論文集. 48巻. 1513-1518 (2004)