2003 Fiscal Year Annual Research Report
河川における外来ザリガニの定着予測ならびに生態的役割に関する研究
Project/Area Number |
01J10536
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
西川 潮 北海道大学, 北方生物圏フィールド科学センター, 特別研究員(PD)
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Keywords | 移入種 / 生物学的浸入 / ウチダザリガニ / ニューラルネットワーク / 予測モデル / 生態系機能 / 水カビ / 底生動物 |
Research Abstract |
北海道では、外来種シグナルザリガニ(ウチダザリガニ)が絶滅危惧種であるニホンザリガニを置き換えてきているが、種の置き換わりのメカニズムとして最も強力なものに、シグナルザリガニが媒介する水カビ(Aphanomycis astaci)が考えられる。ヨーロッパで報告されているように、シグナルザリガニが水カビの媒介者となっているかどうかを、日本国内で初めて生化学的手法(PCR法)を用いて調査した。その結果、調査を行った屈斜路湖、阿寒湖、摩周湖、および置戸湖すべてにおいて水カビのキャリア個体が確認され(調査個体の4〜50%が保菌)、かつてはニホンザリガニが多く生息した屈斜路湖と阿寒湖においては、この水カビが種の置き換わりの主要因である可能性が示唆された。 平成14年度に続いて15年度にも、シグナルザリガニの成長段階に伴う在来生態系への影響評価を、反復実験として行った。シグナルザリガニは著しくトビケラ幼虫や巻貝の仲間を捕食し、底生動物群集の生物多様性に影響を与えたが、その影響力の大きさは一齢個体であっても三齢個体と同様に強力であった。さらに、底生動物分類群によってはシグナルザリガニから受ける直接・間接効果の符号や影響力が異なったことから、一齢個体と三齢個体では機能的役割が異なることが示唆された。外来ザリガニの除去には一般的にどうが使われるが、これらは主に三齢個体以上の大きな個体しか捕獲できないため、すべての齢個体を除去する工夫をしなければ在来生態系の保全効果は薄いことが示唆された。 アメリカ合州国で収集した外来ザリガニの分布データに関して、ニューラルネットワーク(予測精度9割以上)を使用してデータの再解析を行ったところ、ザリガニ種によって制限されている隠れ家のタイプが異なること、適切な隠れ家が存在した場合、ザリガニの分布パタンは河川の流量変動の影響に大きく左右されないことが示唆された(仏国ポール=セバティエ大学訪問)。
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