1990 Fiscal Year Annual Research Report
東南アジアにおける国民国家の形成とエスニシティとの係わりに関する文化人類学的研究
Project/Area Number |
02041010
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
綾部 恒雄 筑波大学, 歴史・人類学系 (30037030)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
SOMBOON Suks チュラロンユーン大学 政治学部, 教授
SHAMSUL A.B. マレーシア国民大学 人類学, 社会学部, 助教授
寺田 勇文 上智大学, 外国語学部, 助教授 (20150550)
野口 鐵郎 筑波大学, 歴史・人類学系, 教授 (20017726)
中島 成久 法政大学, 第一教養部, 助教授 (80117184)
吉田 禎吾 聖心女子大学, 文学部, 教授 (60037025)
小野澤 正喜 筑波大学, 歴史・人類学系, 助教授 (90037044)
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Keywords | エスニシティ / 民族集団 / 国民国家 / 多文化主義 / 民族文化カテゴリ- / 王国世襲型 / 植民地領域世襲型 / 中央一週辺型 |
Research Abstract |
本研究は、東南アジア5ケ国(タイ,マレ-シア,シンガポ-ル,インドネシア,フィリピン)における国民国家形成の過程と各国民を構成する民族諸集団との関係の比較研究を通して,それぞれの国において民族集団間の同化、融和、多文化主義のいずれが強調されているかをエスニシティの実態を把握することによって究明しようとするものである。タイ国は東南アジアでは西欧の植民地にならなかった唯一の国であり、いわゆる「王国世襲型」に分類される。国民国家の形成という意味では,タイ国は国民を構成する諸市族集団,特に少数民族対策としては「中央一週辺型」を志向しており同化主義に近い。マレ-シアの場合はプミプトラ政策の下に華人集団は 正治的に抑圧されているが,なお強力な経済力を維持しているため一種の均衝多元型」となってとおり,各民族集団のエスニック・アイデンティティは明瞭に顕示されている。フィリピンでは,タガログ,ビサャ・イロカノ……などの平地居住のマレ-=キリスト教系の民族的カテゴリ-が観察されるが,これらの相違が民族集団とよびうるものかどうか,なお一層の調査を要する。400年に互子スペインの植民地域がそのまゝ独立したという意味で,フィリピンは「植民地域襲型」の国民国家とよびうるだろう。インドネシアもオランダの植民地域をそのまゝ“世襲"して独立した国であり、マレ-文化のカテゴリ-の中に数百の民族集団が分布する。こゝでは特に民族カテゴリ-内のエスニシティを詳細に分析する必要がある。シンガポ-ルの場合は,人口の80%近くを華人が占めているが,英語を公用語とし,ニ言語政策を国是としている。エスニシティ研究の上では「シンガポ-ル型」を新しく考える必要があろう。東南アジアのエスニシティ研究では(1)民族文化のカテゴリ-(2)民族集団(3)国民国家(4)西欧植民地主義の相互関連が考察されねばならない。
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Research Products
(5 results)
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[Publications] 綾部 恒雄: "イサ-ンにおけるエスニシティ研究の課寿" 東南アジア史学会会報. 54. (1990)
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[Publications] AYABE,Tsuneo: "The Past,Present and Future of Orerseas Chinese Communities in the Pacific Area." community and Change in Orerseas Chinese Communities in the panーPacific Area(Tsukuba Symposium). 6-7 (1990)
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[Publications] NOGUCHI,Tetsuro: "Chinese Religious Sects in Malaysia and Singapore" Community and Change in Orerseas chinese Commanities in the PanーPacific Area (Tsukuba Symposium). 28-30 (1990)
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[Publications] ONOZAWA,Masaki: "Change and Continuity in a Local Chinese Community in Thailand" Community and change in Orerseas Chinese Communities in the PanーPacitic Area (tsukuba Symposium). 26-27 (1990)
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[Publications] 中島 成久: "インドネシア,スルタンIX世の死のディスコ-ス(その1)" 東南アジア史学会会報. 51. (1990)