1990 Fiscal Year Annual Research Report
ヒマラヤ地域の高所極低酸素下における人体の順応機構に関する総合的研究ー京都大学・千葉大学合同プロジェクトー
Project/Area Number |
02041047
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
戸部 隆吉 京都大学, 医学部, 教授 (70025641)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
増田 敦子 千葉大学, 医学部, 助手 (70165710)
楊 雄里 上海生理研究所, 所長
平田 和男 京都大学, 医学部, 助手 (00201731)
榊原 吉一 千葉大学, 医学部, 講師 (50092060)
河合 明宣 京都大学, 農学部, 講師 (90195024)
古川 彰 中京大学, 社会学部, 講師
菅 典道 京都大学, 医学部, 助手 (50186160)
松林 清明 京都大学, 霊長類研究所, 助教授 (50027497)
土 登 チベット自治区, 衛生庁, 副庁長
孫 新甫 チベット医学科学研究所, 所長
遠藤 克昭 京都大学, 医学部, 助手 (30025613)
瀬戸 嗣郎 島根医科大学, 医学部, 助手 (00196974)
松林 公蔵 高知医科大学, 医学部, 助手 (70190494)
増山 茂 千葉大学, 医学部, 助手 (00219354)
松沢 哲郎 京都大学, 霊長類研究所, 助教授 (60111986)
木田 光郎 名古屋大学, 環境医学研究所, 助教授 (80023654)
福田 康一郎 千葉大学, 医学部, 助教授 (10009649)
堀 了平 京都大学, 医学部, 教授 (40001036)
栗山 喬之 千葉大学, 医学部, 教授 (20009723)
本田 良行 千葉大学, 医学部, 教授 (30019525)
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Keywords | 低酸素適応 / 低酸素症 / 疫学調査 / ニホンザル / エリスロポエチン / 眼底像 / 超音波画像診断 |
Research Abstract |
本年度は,京都大学ヒマラヤ医学学術登山隊を組織し,研究代表者である戸部隆吉を総隊長とする大規模な医学学術調査をチベットヒマラヤで展開した。対象としたシシャパンマ峰は標高8027メ-トル,世界第13位の高峰である。中国とネパ-ルの協力を得て,8000メ-トル峰を舞台に,極低酸素が人体に及ぼす影響と低酸素適応の機構の解明がおこなわれた。4月から7月にかけての調査で得られた資料を現在も解析の途中であるが、本年度末2月の国際低酸素症シンポジウムにおいて研究報告をおこなった。ヒマラヤを野外医学調査のフィ-ルドとした,科学研究費による最初の調査研究として,このシシャパンマ隊は多大な成果をおさめたが,以下に概括する。まず、8027メ-トルの頂上に大量22名の登頂に成功した。この中には2名の女性と,60歳と59歳の2名の熟年男性が含まれる。標高が8000メ-トルになると大気中の酸素は平地の約3分の1になる。こうした低酸素がひきおこす諸症状を老若男女を被験者として調査できた成果は大きい。さらにヒトとの比較において重要な資料を提供するものとしてニホンザル2頭を同行した。赤血球数の増加等を指標としてみると,低酸素に対する反応はニホンザルできわめて鋭敏なことがわかった。血液学・心臓循環器・脳神経・消化器・眼底像など多様な視点からの調査を展開したなかから,赤血球の増加を促すホルモン・エリスロポエチンの動態が明らかになるなど、多くの知見が得られている。またシシャパンマ調査のあと,ヒマラヤの北面・チベット側と,南面・ネパ-ル側で,慢性低酸素下に居住する高地住民チベット族の疫学調査をおこなった。高地住民の低酸素適応については,千葉大学班も現地調査を継続してきた。本研究計画の初年度として,ヒマラヤの医学学術調査研究は,きわめて着実な第一歩を踏みだしたといえる。
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