1990 Fiscal Year Annual Research Report
野生ピグミ-チンパンジ-の地域社会の構造と個体の生活史に関する研究
Project/Area Number |
02041049
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
加納 隆至 京都大学, 霊長類研究所, 教授 (40045050)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
古市 剛志 日本学術振興会, 特別研究員 (20212194)
川中 健二 岡山理科大学, 理学部, 教授 (70020790)
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Keywords | ボノボ / ピグミ-チンパンジ- / コモンチンパンジ- / 母子関係 / 社会関係 / 集団間関係 / 側性 |
Research Abstract |
ザイ-ル共和国ワンバにおけるピグミ-チンパンジ-(ボノボ)の研究:1.母子間関係:1990年9月E1集団の老齢メスが死亡した。残された3頭の子の個体追跡では、彼らの社会的地位の急激な下落がみられた。これはボノボらおける母親の役割の重要性を明瞭に示す観察である。また橋本がE1集団の12頭の未成熟個体の発達について観察を行った。2.集団間関係:ボノボの地域社会の講造を明らかにするために、集団間関係の観察が継続して行われている。今年度は例年とは異なる集団間の交渉がみられた。その原因として各集団の社会変化と森林の食物生産量の年変動の二つが考えられる。3.利き手:霊長類の進化における利き手の重要性が最近調されている。野生ボノボの採食行動における手の利用についての観察がE1およびP集団で行わけた。4.メスの生活史:E1集団の9頭のオトナメスの社会交渉を古市が個体追跡法により記録した。この資料は発情状態の変動と関連させて分析される。5.父子判定のための資料収集:最近の生化学技術の進歩により霊長類の父子判定の道が開けた。橋本を中心として、E1集団の全ての個体とP集団の一部の個体のサトウキビのしがみかすが収集された。残された口腔内細胞のDNA分析からワンバのボノボ集団の血縁についての研究が着手される。タンザニア共和国マハレ山塊国立公園におけるナミチンパンジ-の研究:ナミチンパンジ-のオスの社会的成長について検討を加えるため、同地域に棲息するMグル-プに所属するオスの内、αーオスを含む13頭を個体追跡法によって約20時間追跡し、彼らの行動や他個体との社会的交渉について記録した。この13頭の内、10頭は前回(1986年)の調査で選んだものと同じ個体である。今回の資料と前回の資料を比較しながら、オス達の加齢に伴う社会関係の変化や、年齢層による社会関係の相違について検討を加え、彼らの社会的成長について考察する。
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Research Products
(16 results)
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[Publications] KANO,T.: "Intergroup relationships of bonobos in the Wamba Forest,Zaire." Proceedings of the 13th Congress of the International Primatorogical Society. (1991)
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[Publications] 加納 隆至: "ピグミ-チンパンジ-の集団間関係" 遺伝.
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[Publications] KANO,T.: "The bonobos pesceful Kingdom" Natural History. 12. 62-71 (1990)
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[Publications] 川中 健二: "父系集団のオスたち:チンパンジ-のオスの社会的成長" 西田 天貞、 伊沢 紘生、 加納 隆至編 サルノ文化誌. 217-240 (1991)
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[Publications] 古市 剛史: "父系社会を牛耳るメスたち:ボノボの母権的順位構造" 西田 利貞、 伊沢 紘生、 加納 隆至編 サルの文化誌. 561-581 (1991)
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[Publications] FURUICHI,T.: "Prolonged receptivity of females and its influence on social behaviors in a wild unitgroup of bonobo(Pan paniscus) in Wamba,Zaire." Proceedings of the 13th Congress of the International Primatorogical Society. (1991)
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[Publications] 伊谷 原一: "ピグミ-チンパンジ-・ルオ-保護区" アフリカ研究. 37. 65-74 (1990)
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[Publications] 伊谷 原一: "ワカメスのアイデンティティ-:ボノボの集団間移籍をめぐって" 西田 利信、 伊沢 紘生、 加納 隆至編 サルの文化誌. 523-542 (1991)
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[Publications] IDANI,G.: "The relationships berween unit groups of pygmy chimpanzees at Wamba,Zaire." Proceedinga of the 13th Congress of the Interational Primatorogical Society. (1991)
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[Publications] IDANI, G.: "Interーunitーgroup relationships in the bonobo at Wamba, Zaire." African Study Monographs.
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[Publications] 岡安 直比: "ピグミ-チンパンジ-の音声コミュニケ-ションに表れる社会的特性" アフリカ研究. 37. 45-58 (1990)
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[Publications] OKAYASU,N.: "Vocal communication and its scoiological interpretation of wild bonobos in Wamba,Zaire." Proceedings of the 13th Congress of the International Primatorogical Society. (1991)
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[Publications] 五百部 裕: "母親に頼るオスと自立したオス:ボノボのオス間関係" 西田 利貞、 伊沢 紘生、 加納 隆至編 サルの文化誌. 543-560 (1991)
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[Publications] IHOBE,H.: "Male relationships of pygmy chimpanzees of Wamba,Republic Zaire." Proceedings of the 13th Congress of the International Primatorogical Society. (1991)
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[Publications] H.IHOBE: "Maleーmale relationships of wild bonobos(Pan paniscus)at Wamba,Repulic of Zaire." Primates.
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[Publications] 加納 隆至他: "サルの文化誌" 平凡社. 606 (1991)