1991 Fiscal Year Annual Research Report
野生ピグミ-チンパンジ-の地域社会の構造と個体の生活史に関する研究
Project/Area Number |
02041049
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
加納 隆至 京都大学, 霊長類研究所, 教授 (40045050)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
安里 龍 琉球大学, 医学部, 講師 (60045052)
榎本 知郎 東海大学, 医学部, 助教授 (80056316)
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Keywords | ピグミ-チンパンジ- / 社会構造 / 集団間関係 / ナミチンパンジ- / コンゴ / ウガンダ / 音声伝送 / ワンバ |
Research Abstract |
本年度のザイ-ル共和国のワンバでのピグミ-チンパンジ-の現地調査は、岡安直比と伊谷原一(研究協力者)によって行われた。岡安は1991年4月から6月まで共同研究者のJ.Mitani(ミシガン大学)と共に音声の研究を行った。テ-プに録音された多様な音声を様々な社会的コンテクストと関連させつつ、ソナグラム等を利用して分析中である。長距離伝達音声に関しては、選別された特定個体に向けての発せられるナミチンパンジ-の場合とは違い、ピグミ-チンパンジ-は不特定多数の個体に向けて発声する傾向があるとの予備的結果が出ている。また両種の音声は非常に異なっていることが、音声形態学的に明らかにされた。 伊谷はE1集団とP集団の関係の通時的変化とその要因についての調査を1991年4月から9月まで行った。両集団は1986年から次第に親密度を増してきたが、1991年始めからE1集団がP集団を回避する傾向が強くなった。これはE1集団の中心的なメス1頭が死亡し、その息子2頭が周辺化しつつあることと関係があると思われる。この2頭は6月頃までに集団復帰をはたし、それと共にE1集団とP集団の関係は回復しつつある。この観察は、ピグミ-チンパンジ-の集団間の親疎度がそれぞれの集団に属する個体の力関係のバランスの上で決められている可能性を示唆している。 伊谷はまた、1992年1月から3月まで、比較研究の目的でコンゴ共和国のナミチンパンジ-の広域調査を行い、社会構造の基礎資料を収集すると同時に、将来有望な調査候補地をいくつか発見した。加納も同様な目的で、ウガンダ共和国のブウィンディとキバレで2月から3月末まで、森林性ナミチンパンジ-の社会構造のアウトラインを描き出すべく調査中である。
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Research Products
(5 results)
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[Publications] KANO,T.: "Intergroup relationships in bonobos at Wamba,the central Zaire Basin." Proceedings of the Conservation of the Great Apes in the New World Order of the Environment. 70-71 (1991)
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[Publications] 加納 隆至: "ボノボ(ピグミ-チンパンジ-)の集団間関係" 遺伝. 45. 50-53 (1991)
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[Publications] KANO,T.: "The effects of the mother's death on the social relationships of her offspring with other group members." Paper presented at the Understanding Chimpanzees Symposium. (1991)
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[Publications] ENOMOTO,T.: "Flexibility in activities of solicitations for heterosezual intercourse in the ponobo(Panpaniscus)." Proceeding of the 13th Congress of the international Primatorogical Society. 241-242 (1991)
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[Publications] 榎本 知郎: "人間の行動はどこから来たのか" 発達. 47. 71-75 (1991)