北極圏スバルバ-ル諸島における周氷河地形の形成機構

1991 Fiscal Year Annual Research Report

• Project/Area Number: 02041081
• Research Institution: Meiji University
• Principal Investigator: 小疇 尚 明治大学, 文学部, 教授 (10061897)
• Co-Investigator(Kenkyū-buntansha): SALVIGSEN Ot Norsk Polarinstitutt, 教授 ; 澤口 晋一 明治大学大学院, 学振特別研究員 (00222026) ; 松岡 憲知 筑波大学, 地球科学科, 講師 (10209512) ; 小野 有五 北海道大学, 環境科学研究科, 教授 (70091890)
• Keywords: スバルバ-ル諸島 / 周氷河地形 / Ice wedge / Soil wedge / 地すべり / Marginal channel / ピンゴ / Caprock slide

Research Abstract

1.Adventdalenの「川中島ピンゴ」は、3本の縦穴と中心の直下までトンネルを掘って内部構造を観察したところ、厚さ数メ-トルの河床礫に被われた基盤の頁岩が、数枚の氷層と厚さ不明のピンゴ氷の析出、貫入によって隆起したことがわかった。これらの氷の起源を明らかにするために、採集した氷のサンプルを、さらに下流に分布する「小屋ピンゴ」の氷のサンプルとともに現在実験室で分析中である。
2.Adventdalenの実験地では、昨年夏設置したloggerに記録されたデ-タから、1990ー1991年の冬の間にice wedgeのcrackは最大4mm広がったが、夏にはそれが再び閉じたことがわかった。しかし同期間にsoil wedgeのcrackは最大11mm広がったが夏にも閉じなかった。この結果から、ice wedgeは現在成長しているかどうか不明であるが、soil wedgeは成長しているものと考えられる。
3.Skolten北斜面とJanssonhaugen北斜面の実験地では、地面の凍結が始まる8月と9月に、1回に数ミリメ-トルのfrost heaveが8〜9回発生したことがわかった。同実験地での1年間のsolifluctionによる斜面物質の移動量は平均3.9cmであった。
4.Arctowskifjelletの南斜面に広く分布する地すべりブロックを調査し、それらが全て黒色頁岩の上に砂岩をのせるcaprock slideであることを確認した。それらの地すべりブッロクは分布高度が2つに分かれること、発生時期に新旧の別があり、古いものが高位にあることから、氷河の後退に伴って発生したことが予想される。
5.Adventdalen中流部では氷河堆積物の分布と、河系模様の特徴から、この地域の支流の多くは氷河後退期に一時的に停滞した氷河末端のmarginal channelとして形成されたと考えられる。

Research Products

• [Publications] 松岡 憲知: "年平均気温から地盤の最大凍結・融解深度を推定する方法." 地理学評論. 64A. 347-357 (1991)
• [Publications] 松岡 憲知: "凍結融解作用の機構からみた周氷河地形." 地理学評論. 65A. 56-74 (1992)
• [Publications] 澤口 晋一: "スッピツベルゲンおよびわが国高山・山地における凍結・融解作用による斜面物質移動." 地理学評論. 65A. 92-104 (1992)
• [Publications] Siraiwa,S.,Sawaguchi,S.,Hasegawa,H.,Sawagaki,T.& Ono,Y.: "The timing of Little ice age glaciation in the Reindalen,west Spitsbergen,reconstructed by lichenometry." Proc.Internat.Sympo.Little ice age climate.(1992)
• [Publications] 下川 和夫: "スバルバ-ル諸島,スピッツベルゲン島の雪崩堆積物." 札幌大学女子短期大学部紀要. 17. 1-14 (1991)
• [Publications] 長谷川 裕彦,澤口 晋一,原田 暁之: "スッピツベルゲン島,ラインダ-レンで1989年に発生した雪崩の地形形成." 地理学会予稿集. 40. 100-101 (1991)
• [Publications] 小疇 尚: "山を読む" 岩波書店, 1-147 (1991)