1990 Fiscal Year Annual Research Report
肝癌におけるピルビン酸キナ-ゼアイソザイムの遺伝子発現を制御する因子
Project/Area Number |
02152066
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
田中 武彦 大阪大学, 医学部, 教授 (60028272)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
野口 民夫 大阪大学, 医学部, 講師 (70135721)
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Keywords | ピルビン酸キナ-ゼ遺伝子 / エンハンサ- / シス作用領域 / 組織特異的発現 / 肝癌 |
Research Abstract |
肝細胞の癌化に伴うピルビン酸キナ-ゼアイソザイムの変動の程度は肝癌の悪性度と密接に関係している。本研究は肝癌におけるこのような遺伝子発現を制御する因子を固定することを目的とし、今年度は以下の点を明らかにした。L型アインザイムの肝細胞での転写に必要な3ケ所のシス作用領域(LーI、LーII、LーIII)を固定し、それらの配列や特性を明らかにした。すなわち、これらの領域の活性は単独では非常に弱いか、ほとんど認められない。しかし、これらが共に同じ方向に位置した場合には、プロモ-タ-の種類、位置、方向に関係なくプロモ-タ-活性を相乗的に促進したので、1つのエンハンサ-ユニットと考えられた。このユニットを含む領域はトランスジェニックマウスの系でも内因性のL型と同じ組織特異的発現を惹起した。LーIには転写因子LFーB1が、他の領域には未知の核蛋白質が結合することが判明した。このユニットの活性は分化型肝癌では低下し、未分化型肝癌では検出できなかったので、上記の転写因子のどれかが低下、消失しているものと考えられた。しかし、LFーB1の発現は同じ未分化型肝癌でもdRLhー84では検出できなかったが、AH130では正常と同程度に認められたので、その機序は必ずしも同じではないかも知れない。一方、M_2型は転写の制御領域はー500bpまでに存在することが示唆された。この領域の活性は正常細胞では検出されなかったが、M_2型を発現していない分化型肝癌では認められた。 それゆえ、この肝癌では転写因子は存在するが、クロマチン構造のために作用できないものと考えられる。事実、未分化型肝癌でー200bp付近に認められるDNaseI感受性部位は分化型肝癌や正常肝細胞では認められなかった。
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[Publications] Kazuya Yamada et al.: "Tissueーspecific expression of rat pyruvate kinase L/chloramphenicol acetyltransferase fusion gene in transgenic mice and its regulation by diet and insulin" Biochemical Biophysical Research Communication. 171. 243-249 (1990)
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[Publications] Kazuya Yamada et al.: "Identification and characterization of hepatocyteーspecific regulatory regions of the rat pyruvate kinase L gene.The synergistic effects of multiple elements." Journal of Biological Chemistry. 265. 19885-19891 (1990)
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[Publications] 野口 民夫: "ピルビン酸キナ-ゼの遺伝子調節機構と臨床応用" 臨床病理. 38. 868-875 (1990)
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[Publications] Masaru Takenaka et al.: "Isolation and characterization of the human pyruvate kinase M gene" European Journal of Biochemistry. (1991)