1990 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
02201216
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Research Institution | University of Toyama |
Principal Investigator |
水谷 義彦 富山大学, 理学部, 教授 (00022575)
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Keywords | 立山地獄谷 / 噴気孔ガス / マグマ性ガス成分 |
Research Abstract |
立山火山は12.3万年前に成層火山を形成し、その後,火山灰の放出,カルデラの形成,溶岩噴出などの一連の火山活動を行い,その最末期の活動として地獄谷において水蒸気爆発を行った。地獄谷は2つの火口跡からなり,東北部の火口は6000〜3000年前,南西部火口は3000年前以降の爆発によって形成された。その後,大規模な爆発は行われていない。現在,地獄谷の南西部火口を中心に噴気および温泉活動が行われている一連の火山活動を行い衰退期に入っていると思われる立山火山が放出しているガス成分の組成を,活動期にある火山のガス成分の組成と比較するため,噴気の化学分析と同位体比測定を行った。 噴気は過去40年以上にわたり100℃〜120℃を保ち,昇華硫黄を沈積し続けている。化学分析の結果は,安山岩火山の比較的低温の噴気としては,二酸化炭素,硫黄化合物および塩化水素の濃度が高いこと,深部起源の指標である窒素/アルゴン比およびヘリウム/アルゴン比が高温の火山ガスよりも高いことなどを示した。同位体比の測定結果は,噴気中の水蒸気のδDおよびδ^<18>O値が安山岩火山のマグマ水の値と天水の値のほぼ中間の値であり,噴気がマグマ水と天水の混合物であることを示した.また,噴気中の二酸化炭素のδ^<13>C値(ー4〓)はマントル起源の二酸化炭素の値(ー5〓)にきわめて近いことが明らかにされた。 火山活動の最末期にあり,マグマ性ガス成分の寄与が小さいと考えられた立山地獄谷の噴気活動が,予想に反して,地下深部からのマグマ性ガスが大きく寄与していることが明らかになった。このことは,これまでに,たびたび,立山地獄谷で発生している噴気中の硫化水素に起因する中毒事故に対し,長期的な対策が必要であること,また今後,より大きな災害をもたらす爆発などの活動を行う可能性のあることを示唆している。
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