1990 Fiscal Year Annual Research Report
北西アフリカのイスラ-ムの特性と都市の成立・発展にたいする影響の比較研究
Project/Area Number |
02207116
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
竹沢 尚一郎 九州大学, 文学部, 助教授 (10183063)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
田中 哲也 九州大学, 文学部, 助手 (50207114)
堀内 正樹 民族学振興会, 研究員 (10209281)
坂井 信三 南山大学, 文学部, 助教授 (00140012)
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Keywords | イスラ-ム / 西アフリカ / 北アフリカ / 都市化 / 交易 / 聖者崇拝 |
Research Abstract |
1.北アフリカと西アフリカのイスラ-ムに共通する特徴として、聖者崇拝があることが確かめられた。北アフリカと西アフリカのあいだには、交易等をつうじての長い交流の歴史があるが、それが聖者崇拝の出現にかんして影響したか否かの点については、むしろ否定的な見解が強くなった。 2.北アフリカと西アフリカのあいだには、とりわけ西アフリカの金を中心にした経済的交流が存在したが、それが西アフリカの社会・経済的制度にたいして大きな影響を与えたこと、そして北アフリカ・中東の諸社会の経済的発展にも重大な貢献をなしていたことを後付けることができた。それのみならず、西アフリカの金が中世から近世にかけてのヨ-ロッパ世界の経済的発展にも決定的な寄与を果たしていたことが明らかになった。従来の研究は狭い地域の範囲での考察が主であったが、もっと視点を大きくとり、地域を横切る立場からの研究を継続することの必要性を痛感させられた。 3.歴史的に見て、イスラ-ムが人々の交流を促進する宗教であったこと、そしてそれは異質な背景を持つ諸社会を結び合わせる緊密なネットワ-クを作り上げていたことが、明らかにされた。こうしたことからも、宗教と社会・経済は対立するものではなく、むしろ両者を統一的にとらえることが、過去の人間の歴史の理解に必要なだけでなく、現在の社会の把握にも不可欠であることが確認された。
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[Publications] 竹沢 尚一郎: "聖者崇拝と憑依" イスラムの都市性・研究報告. 第20号. 1-9 (1990)
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[Publications] 竹沢 尚一郎: "ジハ-ド史観を脱却すべきではないか" アフリカ研究. 第36号. 31-43 (1990)
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[Publications] 竹沢 尚一郎: "西アフリカの都市と金" イスラムの都市性・研究報告.
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[Publications] 坂井 信二: "19世紀西ス-ダンの聖者崇拝" イスラムの都市性・研究報告. 第20号. 10-21 (1990)
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[Publications] 堀内 正樹: "聖者複合の構造" イスラムの都市性・研究報告. 第20号. 22-40 (1990)
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[Publications] 堀内 正樹: "モロッコにおける聖者信仰の複合性" イスラムの都市性・研究報告. 第97号. 1-25 (1991)
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[Publications] E.ゲルナ-(田中 哲也・堀内 正樹他訳): "イスラム社会論" 紀伊国屋書店, 500 (1991)