1990 Fiscal Year Annual Research Report
上演芸術における日本語音声の音響的特徴抽出とその音声教育への適用に関する研究
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02224108
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
中山 一郎 大阪大学, 産業科学研究所, 助手 (60029890)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
上畠 力 大阪教育大学, 教育学部, 教授 (00030354)
垣田 有紀 金沢工業大学, 工学部・電子工学科, 教授 (00098823)
柳田 益造 郵政省通信総合研究所関西支所, 知的機能研究室, 室長 (00116120)
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Keywords | 日本語による歌唱 / ベル・カント唱法 / ホルマント周波数 / singing formant / 伝統芸能 / 音韻明瞭度試験 / 異聴マトリックス / 母音の中性化 |
Research Abstract |
本年度は、上演芸術のうちの歌唱について、以下の1、2を行なった。 1.「伝統芸能における歌唱表現の音響的特徴(洋楽的歌唱との比較)」 前年度に引き続き、日本語の扱いに工夫を重ねて発展して来た伝統芸能(本年度は能、長唄、地歌、山田流筝曲、民謡)における日本語の表現法(発声法、音の移行法)の音響的特徴を、洋楽的歌唱と原則的に同一の創作テキストを用いて比較し、両者の普遍的差異を抽出した。それによって次の結果が得られた。洋楽的歌唱においては、(1)一定の響きを持った母音の中で子音は短く発音され、音の移行と一音節の発音がほぼ同時で、音の移行も明瞭である。一方、伝統芸能においては、母・子音中に細かい変化を付け、また、音の移行と発音のずれを意識的に起こさせたり、フレ-ズの最初の二音節をまとめることが極く普通に行なわれる。(2)明瞭なsinging formantが認められ、低次倍音が多く、ビブラ-トを伴う。一方、伝統芸能においては、高次倍音をより多く含み、話し声に近い構音であり、ビブラ-トを変化させる。 2.「日本語の歌唱における母音の音韻明瞭性について」 日本語を洋楽的唱法で歌唱する場合に、しばしば音韻の不明瞭さが生じる(特に、女声の高ピッチ発声時)。ここではソプラノ(6名)、及び、女性民謡歌手(2名)が発声する単独の5母音について、ピッチ(C^#_5〜A_5)、唱法("響き"を意識する場合と、"日本語"を意識する場合の2通り)を変化させて、被験者のへッドホン受聴による音韻明瞭度試験を行なった。それによって次の結果が得られた。洋楽的歌唱においては、(1)ピッチ上昇と共に母音の中性化が増大し、/o/、/u/は/a/と、/i/は/e/と異聴され易くなる。一方、民謡においてはその傾向は少ない。(2)"日本語"を意識して発声すれば(構音的には「響きを浅く」する)、音韻明瞭性を改善することが可能である。
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Research Products
(2 results)