Research Abstract |
A班に共通な音声資料の収集作業に関しては,第2年度である今年度はそのピ-クに達していて,収集計画の大半をこの年度に集中させて,おこなった。1991年2月末現在,琉球列島の代表的な地点に関する老年層,中年層の音声収集作業は計画目標(10地点)の70%程度,そして那覇市を対象にすすめている若年層から高年層にいたる多人数を対象にした調査も収録目標(70名)の90%以上をおえている。そしてこれら資料を比較対照するために,規範的な発音による首都圏方言についての録音,東北北部方言についての録音(各1名)もおこなった。また,琉球列島諸方言を中心に,アイヌ語もふくめ,ほぼ日本語圏全体を視野におさめながら,これら採集された音声資料に関する比較と分析の作業を開始した。この分析作業の中には日本語圏における基層としてのアイヌイズムの存在の有無などの究明もふくまれている。 一方,当班に独自な琉球列島諸方言の諸種の音声資料収集計画(単語レベル,文レベル,作品レベルの3種類の音声資料,すなわち辞書や語彙集の項目と例文の音声化,歌謡,民話,演劇の脚本,方言ニュ-スなど,諸種の方言音声資料の組織的収集とテキスト化)も,それぞれ進捗状況におおきな差があるけれども,順調に進行しつつある。 また,これらの収集作業と平行して,これらの分析のためには,音声分析のための理論の構築がかかすことのできないが,それは主としてこの班の代表者上村幸雄のこれまでの音声学的,音韻論的,方言地理学的,音韻史的,教育的な研究を基礎としながら,これを総合し,補完し,また音声資料の分析へ適用をこころみるという形をとりながら,進行していて,その過程でおおくの知見がえられつつある。
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