1990 Fiscal Year Annual Research Report
ショウジョウバエを用いた細胞間相互作用の分子的研究
Project/Area Number |
02236205
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
上村 匡 京都大学, 理学部, 助手 (80213396)
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Keywords | 細胞間相互作用 / ショウジョウバエ / 分子遺伝学 / パタ-ン形成 |
Research Abstract |
生物の発生や再生過程でのパタ-ン形成形を説明するため、位置情報の概念が提唱されて久しいがいまだにその分子像はほとんど明らかでない。それらの分子をコ-ドする遺伝子群を同定しその機能を明らかにするため、ショウジョウバエ(Drosophila melanogaster)の成虫原基(Imaginal disc)の形成に着目した。ショウジョウバエの成虫原基はその再生現象の詳しい解析などから、細胞間相互作用の観点から位置情報の分子像に迫るのに適した材料と思われる。 第三染色体上の致死変異系統のコレクション(292株)から、成虫原基のパタ-ン形成に著しい異常を生ずる系統を7株分離した。そのうち4系統の変異株で、以下に述べる異常のいずれかが高い頻度で検出された。(1)成虫原基組織全体の腫瘍化。(2)部分的な構造の重複(Duplication)。(3)局所的な細胞の異常増殖。(4)細胞層の折れたたみの異常。各系統の表現型を、組織切片の作製やコンパ-トメント特異的なマ-カ-を用いた染色などにより検討している。 表現型の解析を進めつつ並行して遺伝子のクロ-ン化を開始した。各変異株はゲノム中に転移因子が1コピ-挿入されており、その挿入位置近傍に求める遺伝子が存在することが期待される。2系統についてはすでに挿入位置近傍のゲノムDNAを単離しており、その領域から作られる転写産物を同定しようとしている。 本研究ではまず変異株を分離しているので、正常なパタ-ン形成に必要な遺伝子を対象にしていることは約束されている。これらの遺伝子群が再生にも関与することが期待される。今後クロ-ン化した遺伝子を用いた研究を通して、遺伝子産物の分子機能に迫りたい。
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