1990 Fiscal Year Annual Research Report
アルツハイマ-病および老化に伴う微細回路網の障害と細胞移植の効果
Project/Area Number |
02240204
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Research Institution | Gunma University |
Principal Investigator |
井上 洋 群馬大学, 医学部, 講師 (30125827)
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Keywords | 神経細胞変性 / 神経細胞死 / 細胞間相互作用 / 神経回路網 / シナプス結合 / 神経移植 |
Research Abstract |
神経細胞の生存および死滅には,細胞間の相互作用(栄養因子,伝達物質等)が重要な役割を演じている。アルツハイマ-病モデルラットのシャトル型非連続回避テストおよびコリナ-ジック神経の免疫組織学的検索を行ない,片側性障害モデルでは学習障害はみられず,両側性モデルでも長期経過で回復能のあることが明らかになった。そこで機能変あるいは免疫組織検索より選別されたモデルラットの大脳皮質微細構造を高齢ラットと比較し,神経細胞変性とシナプス結合の変化について検索した。高齢ラットでは皮質神経細胞の減少と共に樹状突起の減少が著しく殆どの神経細胞に多くのリポフスチン顆粒の沈着が見い出された。変性萎縮した細胞や樹状突起がみられ,分子層では変性軸索(有髄)も存在した。モデルラットでは,初期に散在性の神経細胞変性像と,数多くの樹状突起および軸索終末の変性所見があり,1ー3週後では樹状突起の変性が散在性にみられたが,細胞や軸索終末の変性は殆ど見い出されなかった。高齢ラットでは神経細胞自体の変化が主で細胞体内の代謝変化が考えられるが,アルツハイマ-病モデルラットでは皮質神経細胞に結合するシナプスの変化を介し,樹状突起から細胞へと波及する変化と推測され,神経細胞の減少は高齢ラットに比してわずかであった。また長期経過で機能的回復能がみられるため,部分的な可逆的変化の存在が推測される。近年神経再生に関連する特異蛋白(多くは神経発生とも関係する)が見い出されており,遺伝子レベルでの解析も進んでいる。末梢および中枢神経再生時の本蛋白の発現を検索し,再生突起にこれを見い出しているが,共同研究者により本蛋白(ドレブリン)を発現させた培養細胞の形態変化と突起形成が明らかにされている。今後モデル動物と老化動物の神経細胞および回路網の変化について,本細胞を移植することによる可逆性の変化を中心に検索する予定である。
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[Publications] 井上 洋: "神経移植:臨床応用の現状と将来の可能性問題点" Neurosurgeons. 9. 166-178 (1990)
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[Publications] H.K.Inoue: "Differentiation of human ependyma and differentiation potential in ependymal tumors" J Clin Electron Microscopy. 23. (1990)
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[Publications] 井上 洋: "ヒト神経組織の異種移植:宿主との相互関係について" 脳と免疫. 3. (1990)