1990 Fiscal Year Annual Research Report
分散型EXAFS法の高感度化とそれによる錯体,金属酵素の反応の動的解析
Project/Area Number |
02245104
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Research Institution | Jichi Medical University |
Principal Investigator |
西郷 敏 自治医科大学, 医学部, 助教授 (70049071)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
松下 正 高エネルギー物理学研究所, 放射光, 教授 (40092332)
柴山 修哉 自治医科大学, 医学部, 助手 (20196439)
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Keywords | X線吸収スペクトル / EXAFS / 急速凍結法 / 反応中間体 / 分散型EXAFS / 金属タンパク質 |
Research Abstract |
金属錯体や金属タンパク質などの反応過程をX線吸収スペクトルの時間変化として捉える方法として、分散型測定法と急速凍結法について、装置の開発とその応用を行った。 分散型測定では、試料は液体の溶液状態であり、測定中に機械的な動きがないために、スペクトルの微妙な差を検出できるという特徴がある。これまでに我々は、0.3M程度の鉄イオンの溶液反応を時間分解能5msで測定している。測定対象をさらに広げるための重要な条件は、より希薄な試料で質の良いデ-タを取れるようにすることである。このために測定系の改良に着手した。具体的には、X線検出用のフォトダイオ-ドアレイを低暗電流のMOS型のものに変え、これを低雑音の読み出し回路で駆動するようにした。これらを新しいデ-タ処理システムに接続して、動作テストを行った。実際のX線測定は今後行う予定である。 希薄な試料のX線吸収スペクトルを測定するためには、蛍光法を利用することが必要になる。急速凍結法を用いれば、このような測定が反応を停止した試料について可能になる。この方法を用いて、シアンを結合した3価鉄ミオグロビンをジチオナイトで急速に還元したときに現れる中間体のX線吸収スペクトルを測定した。鉄吸収端付近の中間体のスペクトルの形は、初期状態のシアン型ものによく似ていて、最終状態の還元型のものとは異なっていた。吸収端の位置は、反応に伴って約4eV低エネルギ-側に移動するが、中間体ではこの値の約1/3だけしか移動していなかった。EXAFS部分をスペクトルから取り出して比較すると、中間体と初期状態は似ているが、最終状態はこれらと大きく異なっていた。以上のことより、中間体へ移行した段階では、シアンはヘム鉄に結合したままで、大きな構造変化は起こっていないことが結論できる。
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[Publications] N.Yoshida,T.Matsushita,S.Saigo,H.Oyanagi,H.Hashimoto and M.Fujimoto: "Detection of intermediate species in electron transfer between iron (III) nitrate and hydroquinone by millisecond timeーresolved Xーray absorption spectroscopy in dispersive mode" J.Chem.Soc.,Chem.Commun.4. 354-356 (1990)