1990 Fiscal Year Annual Research Report
濃厚電解質水溶液の過冷却状態における分子ダイナミクス
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02245107
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Research Institution | The Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
田中 和子 理化学研究所, 生体物理化学研究室, 研究員 (30087481)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
長谷部 亨 福島大学, 教育学部, 助教授 (10091852)
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Keywords | 過冷却水溶液 / 塩化リチウム / 臭化リチウム / 示差熱解析 / ^1HーNMR / ^7LiーNMR / 分子ダイナミクス |
Research Abstract |
濃厚電解質水溶液の過冷却状態は,分子運動が極度に束縛された状態にあるため,イオンおよびその周囲にある水分子の運動を研究するのによい系と考えられる。我々はこの過冷却水溶液の時間的安定性を調べることを目的として,多目的示差熱解析装置を開発した。そして,これまでの研究により,比較的安定な過冷却状態を保つことが見い出されている,8〜14mol kg^<ー1>塩化リチウム,8〜10mol kg^<ー1>臭化リチウム水溶液について,時間的安定性を測定したところ,いずれの溶液もガラス転位点より高い温度では,50時間以上液体状態を保つことが分った。 そこで, ^1Hー, ^7LiーNMRのSpinーlnttice(T_1)およびSpinーSpin(T_2)緩和時間を,上記の各溶液について,常温からガラス転位温度まで測定した。T_1の極小より高い温度では, ^7Liー ^1HーのT_1,T_2ともに,一致しており,リチウムイオンの水和体の拡散が緩和を支配していることを示している。T_2のmotional narrowingは,いずれの系でも,ガラス転位温度より約20Kほど高い温度で観察されたが,これは示差熱解析とNMRの観察の時間スケ-ルが違うためと考えられる。BPP理論にもとずいて,T_1の値を解析し,自己拡散の相関時間と温度の関係を求めたところ,T_1極小附近で,両者は直線関係を示した。また,傾斜から求めた活性化エネルギ-はいずれも35kJ mol^<ー1>前後の値を示しており,通常の水溶液の拡散の活性化エネルギ-16KJ mol^<ー1>よりかなり大きかった。
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[Publications] Kazuko Tanaka,Reita Tamamushi: "A Physicoーchemical Study of Concentrated Aqueous Solutions of Lithium Chloricle" Z.Naturforsh.45. (1990)
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[Publications] Tooru Hasebe,Kazuko Tanaka,Reita Tamamushi: "Thermal and NMR Studies of Concentrated Aqueous Solutions of Lice"