1990 Fiscal Year Annual Research Report
金属系多層膜構造の安定性に関する材料組織学的基礎研究
Project/Area Number |
02254210
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Research Institution | Nagoya Institute of Technology |
Principal Investigator |
宮崎 亨 名古屋工業大学, 工学部, 教授 (70024213)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小坂井 孝生 名古屋工業大学, 共同研究センター, 助教授 (80110253)
土井 稔 名古屋工業大学, 工学部, 助教授 (60135308)
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Keywords | 多層膜 / 組織安定性 / 熱処理 / コバルトー銅合金 / 非線形拡散方程式 / 計算機シミュレ-ション |
Research Abstract |
1.CoとCuの2元素からなる多層膜を真空蒸着法により作製し,オ-ジェ分光法,透過電顕観察,走査型電顕観察,X線マイクロアナリシス,光電子分光法などにより,熱的安定性を調べた結果,以下のことが明かとなった. (1)作製したままの状態の多層膜は,良好な周期的積層構造を有しており,各層は微細な結晶粒からなっている. (2)最表層がCuの多層膜を短時間時効すると,最表面Cu層が消失してゆくとともに,Cu粒子が表面に形成される. (3)長時間時効では,周期構造は完全に崩れ,CoとCuの2相が3次元的に入り交じった状態に変化する. (4)短時間時効において,内部の周期構造がまだ保たれている状態でも,各層の濃度プロファイルはCo/Cu界面から徐々に崩れ始め,蒸着時の急峻な界面は容易に失われる. (5)最表面がCo層の多層膜も熱的に安定でなく,時効とともに周期構造は徐々に崩れてゆくが,上記(2)のようなCu粒子の形成はほとんど見られない. 2.相分離型状態図を構成する2元素からなる多層膜は,従来安定であると考えられてきたが,必ずしも安定であるとは限らない.適当な温度に加熱すると,3次元的な拡散が起き,多層構造が崩れてゆく.この変化は,多層構造を有する相分離組織からエネルギ-的により安定な別の相分離組織への変化であると考えることができる. 3.多層構造の時効変化,特に時効初期における濃度プロファイル変化は,CahnーHilliardの非線形拡散方程式を利用した計算機シミュレ-ションによりうまく再現できる.このようなシミュレ-ションにより,多層膜の安定性に関する理解がさらに深まるものと考える.
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Research Products
(4 results)
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[Publications] 宮崎 亨: "An Estimation of the Free Energy of the Microstructure in Aged Alloys" Materials Science and Engineering.(1991)
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[Publications] 土井 稔: "A New Parameter for Describing the Structure Bifurcation in Two Phase Alloys Containing Coherent Particles" Journal of Materials Science. (1991)
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[Publications] 池松 陽一: "Phase Decomposition of LiquidーQuenched β type TiーCr Alloys" Journal of Materials Science. (1991)
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[Publications] 竹内 章: "非線形拡散方程式に基づく正則固溶体の相分解シミュレ-ション" 日本金属学会誌. 54. 1177-1182 (1990)