1991 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
02255228
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Research Institution | Tokyo Metropolitan Institute for Neuroscience |
Principal Investigator |
杉下 守弘 (財)東京都神経科学総合研究所, リハビリテーション研究部門, 副参事研究員 (10114513)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
関 啓子 (財)東京都神経科学総合研究所, リハビリテーション研究部門, 主事研究員 (90154640)
石島 武一 東京都立神経病院, 脳神経外科, 部長 (30048970)
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Keywords | 右側頭葉 / 非言語性記憶 / レイーオステライト複雑図形 / ウェクスラ-記憶検査(改訂版) / 側頭葉前部切除術 |
Research Abstract |
右側頭葉前部の損傷により非言語性記憶障害が生ずるとされている(Smith1989)。しかし、デ-タは少ない(Taylor1969,Milner1975)。われわれは、非言語性記憶課題として用いられているレイーオステライト複雑図形の想起課題ウェクスラ-記憶検査(改訂版1987年)の3つの非言語性記憶課題を右側頭葉前部切除術の前後に検査し、術後に障害が生ずるかどうか検討した。 難治性てんかんのため、右側頭葉前部を切除した5例と左側頭葉前部を切除した4例を対象とした。症例は9例ともすべて右利きで、アミタ-ルテストにより左半球が言語優位半球であった。右側頭葉前部を切除した5例のうち、4例では上・中・下側頭回、紡錘回、海馬傍回が側頭極から後方へ約5cm切除され、海馬、扁桃核も切除された(症例1、2、3、4)。残る1例は、海馬・海馬傍回・扁桃核のみが切除された症例であった(症例5)。一方、左側頭葉前部を切除した4例のうち、1例は海馬・海馬傍回・扁桃核が切除され(症例6)、2例は症例6の切除部位の加え紡錘回と下側頭回が切除された(症例7、8)。また、残る1例は症例7、8の切除部位にさらに上側頭回先端と中側頭回が切除された(症例9)。 レイーオステライト複雑図形の想起課題 右側頭葉前部を切除した5例すべてで、術前に比べ術後に明かな低下は認められなかった。また、左側頭葉前部切除例4例もすべて術前と比較して、術後に低下を認めなかった。ウェクスラ-記憶検査の視覚性記憶指標 被覚性記憶指標が術後16(2SD)以上低下した場合を視覚性記憶の低下と考えると、右側頭葉前部切除例5例と左側頭葉前部切除例4例のいずれの症例にも視覚性記憶の低下はみられなかった。このことは、右側頭葉前部損傷によって非言語性記憶障害が生ずるとする従来の説を支持せず、障害が生じないと考えられる。
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Research Products
(3 results)
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[Publications] 杉下 守弘: "記憶障害と臨床神経病理" 臨床科学. 27(7). 801-810 (1991)
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[Publications] H.Shimizu et al.: "Modifications of Temporal Lobectomy According to the Extent of Epileptic Foci and SpeechーRelated Areas" Surg Neurol. 34. 229-234 (1990)
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[Publications] 杉下 守弘: "右半球の神経心理学" 朝倉書店, 303 (1991)