1990 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
02301009
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
新田 博衞 京都大学, 教養部, 教授 (80026749)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
愛宕 出 京都女子大学, 短期大学部, 助教授 (90152496)
米澤 有恒 兵庫教育大学, 学校教育学部, 助教授 (70093341)
五十嵐 節子 ノートルダム女子大学, 文学部, 助教授
中村 興二 奈良女子大学, 文学部, 教授 (50000360)
野口 榮子 関西学院大学, 文学部, 教授 (70087691)
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Keywords | 宇宙感触 / 日常性 / 好奇心 / ポストモダン / ジェンダ- / 化身 / 神の子 / 服飾 |
Research Abstract |
(1)近代美学の立場を相対化する為に、まず古代ギリシア、とくにヘラクレイトスの断片が考察された。近代の美学=感性論が主観を中心とするのに対して、ヘラクレイトスの場合は宇宙を中心とした感性論が成立している。宇宙の三元の運動と人間の身体の運動とが相即していて、近代の機械論的自然観と顕著な対立を成している。 (2)近代主義の脱構築の代表としてハイデガ-の哲学が選ばれ、『存在と時間』における人間存在の日常性の在り方が考察された。日常性が「気分」とか「状態感」とかによって特徴付けられ、さらに「好奇心」及びその時間性の構造分析が行われた。真理論を中心とするハイデガ-自身の藝術哲学と別途に、基礎存在論に基づく藝術論の可能性が探られた。その狙いは創作よりむしろ受容の美学を構想するにある。 (3)小説というすぐれて近代的な文藝ジャンルの今日的意義と可能性が探られた。(2)の問題意識と同じく、作者よりむしろ読者の立場に立った小説論が展開された。読者のジェンダ-を重視すべき事、とくにポストモダンと形容すべき小説はまだ成立していない事、現代小説における引用の問題などの知見が得られた。 (4)「エッサイの樹」の図像を中心にして、キリストの人性を11世紀〜12世紀の絵画がどのように表現したかが考察された。神が人間に化身する事と、イデアを感性的に表現する西欧藝術観との類似性が指摘された。 (5)フランス革命における「サン・キュロット」と画家ダヴィッドとの連関を通じて、政治と藝術との関係が考察された。服飾がはたして美学の研究対象になり得るのかどうかが議論された。もし美学の対象になるのなら服飾の基礎がもっと掘り下げられて、人間存在との繋がりが明らかにされねばならない、という結論であった。
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