1990 Fiscal Year Annual Research Report
ドイツ近代における女性論の展開と文学作品に現れる女性像の変遷
Project/Area Number |
02301066
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
柴田 翔 東京大学, 文学部, 教授 (00011312)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
谷川 道子 東京外国語大学, 外国語学部, 助教授 (50038501)
土合 文夫 東京女子大学, 文理学部, 助教授 (60114576)
清水 本裕 東京農工大学, 一般教育部, 助教授 (80139485)
浅井 健二郎 東京大学, 文学部, 助教授 (30092117)
池内 紀 東京大学, 文学部, 助教授 (70083277)
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Keywords | 女性論・女性像 / 寓意(アレゴリ-) / 象徴(シンボル) / 近代イデオロギ- / ロマン派 / 母権 / モ-ド / 文学 |
Research Abstract |
本研究は近現代のヨ-ロッパ(特にドイツ)文学・思想に現れる女性像・女性論のもつ特徴を分析・解読することによって、ヨ-ロッパ近代の抱えた矛盾の歴史を明らかにし、その様式・構造・転換のメカニズムの解明に寄与しようとする試みであった。平成2年度においては啓蒙期から現代に現れた主だった女性論・女性像を俯瞰し、啓蒙期から19世紀末までに関連する個別研究とその報告がおこなわれた。具体的な成果を以下に時代ごとに列挙する。(1)、啓蒙期・古典主義:ゲ-テ「親和力」におけるオッティ-リエをはじめとする登場人物の持つ寓意的機能の解明(2)、ロマン派:ノヴァ-リスやロマン派のオペラにおけるdas hohe Paar,das niedere Paarの果たす象徴的役割の分析、アイヒェンドルフの小説空間においてアレゴリ-と個別性の間を揺れる女性像の解読、ホフマン等に顕著に見られる機械と女性のモティ-フの歴史的射程範囲の測定、F・シュレ-ゲルの女性論に近代のイデオロギ-の源流を抽出する試み (3)19世紀:歪曲されてきたバッハオ-フェン像修正、彼の母権・象徴・神話概念の秘める現代における展開可能性の検証.ニ-チェの女性論の持つ反語的意味と実生活との関係の解明、(4)、初期自然主義・モデルネの諸潮流:シュティフタ-・ハウプトマン・ジンメルの3つのテキストにおけるし^^・る^^・し^^・と偶像という概念の析出の試み、世紀末におけるノラ・サロメ・エレクトラの3人の文学的女性像の変遷および写真や肖像画がもたらした女性身体の新たなイメ-ジの変転の跡づけ (5)、ヴァイマ-ル共和国から大戦後:モ-ド・娼婦・死などの概念が近代女性論にもたらした根本的な変革のベンヤミン等のテキストからの解読、H・ミュラ-、P・ツェラン、戦後の女性作家たちの作品に現れる女性像の“現代性"の検証、等である。次年度の課題はこれら個別研究を統括的な形で捉え直し、近代女性像の変遷の原理解明に一つの視座を与えることとなる。
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Research Products
(20 results)
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[Publications] 柴田 翔: "Wo ist Faust wohnhaft?" 上智大学ドイツ語圏文化研究所刊『ドイツ語圏研究』. 8. 110-118 (1991)
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[Publications] 三宅 晶子: "壁の開放とドイツの作家たち" 新潮. 87. 168-169 (1990)
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[Publications] 三宅 晶子: "言語による共同空間としての二十世紀ドイツ語文学" 新潮 別冊. 別冊. 678-682 (1991)
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[Publications] 浅井 健二郎: "ベルリン市壁の第四代目がこけて、さて?" DAAD友の会報. (1991)
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[Publications] 池内 紀: "珠の話" 国文学. 35. 36-41 (1990)
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[Publications] 池内 紀: "みやびなる宴" 国文学. 35. 8-12 (1990)
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[Publications] 池内 紀: "少年変化" ユリイカ. 74-79 (1990)
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[Publications] 池内 紀: "退屈な話" 現代思想. 126-130 (1990)
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[Publications] 池内 紀: "あるゲルマンの肖像" 嗜好. 20-26 (1990)
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[Publications] 池内 紀: "見えない地図" 文學界. 264-271 (1990)
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[Publications] 前田 良三: "Antinomieーpoetisch depoetisiert.Zu Eichendorffs Gedicht“Die zwei Gesellen"." 埼玉大学紀要(教養部)総合篇. 9. 1-11 (1991)
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[Publications] Eiichiro Akashi: "U^^¨ber die Grenze der Begriffe und die Funktion der Bilder in Musils “Tonka"" Genauigkeit und SeeleーZur o^^¨sterreichschen Literatur seit dem Fin de sie^^′cle (MusilーStudien Bd.18),Wilhelm Fink Verlag,Mu^^¨nchen.97-114 (1990)
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[Publications] 赤司 英一郎: "重い夢ームシルの『テルレスの惑い』のなかの或るモチ-フについてー" 東京学芸大学紀要 第2部門 第42集. 329-344 (1991)
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[Publications] 識名 章喜: "技術の未来が語られるとき,または映像と言葉の葛藤ーラングノフォン・ハルボウの『メトロポリス』についてー" 慶應義塾大学日吉紀要 言語・文化・コミュニケ-ション. 6. 24-52 (1990)
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[Publications] 清水 本裕: "ニ-チェはル-に結婚を申し込んだか?ーニ-チェ伝の一問題ー" ドイツ文学. 85. 52-63 (1990)
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[Publications] (訳者)臼井 隆一郎: "ル-トヴィヒ・クラ-ゲス 象徴的思考の更新者としてのバッハオ-フェン" 女性史研究. 25集. 50-53 (1990)
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[Publications] 共著 三宅 晶子: "『NUDE 4』所収論文「裸身の変容と写真のまなざし」" 朝日出版社, 236 (1991)
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[Publications] (訳者)池内 紀,浅井 健二郎,内村 博信,秋葉 篤志: "シュテファン・コッペルカム『幻想のオリエント』" 鹿島出版会, 315 (1991)
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[Publications] 池内 紀: "恋文物語" 新潮社, 233 (1990)
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[Publications] 池内 紀: "本を焚く" 冬樹社, 268 (1990)