1991 Fiscal Year Annual Research Report
ドイツ近代における女性論の展開と文学作品に現れる女性像の変遷
Project/Area Number |
02301066
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Research Institution | University of Tokyo |
Principal Investigator |
柴田 翔 東京大学, 文学部, 教授 (00011312)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
土合 文夫 東京女子大学, 文理学部, 助教授 (60114576)
清水 本裕 東京農工大学, 一般教育部, 助教授 (80139485)
谷川 道子 東京外国語大学, 外国語学部, 助教授 (50038501)
浅井 健二郎 東京大学, 文学部, 助教授 (30092117)
池内 紀 東京大学, 文学部, 教授 (70083277)
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Keywords | ドイツ文学 / 女性論 / 女性像 |
Research Abstract |
本研究は近現代のドイツ思想・文学に現れる女性論および女性像を相互に関連づけつつ分析・解読することによって、ヨ-ロッパ近代の孕んだ矛盾の歴史を明らかにし、近代の美意識、知覚様式や文化構造が転換してゆく、そのメカニズムの解明に寄与しようとするものであった。今年度前半においては、前年度の個別研究の成果を各々の研究領域において捉え直し、問題意識を深化させた成果が各分担者により報告された。今年度に得られた成果を時代的に記す。1.啓蒙期・古典主義:世紀転換期の女性像との比較による、18世紀末のエレクトラ像の分析。2.モデルネの諸潮流:女性蔑視を主調とするK・クラウスの文学テクストと、私的領域の言説に見られるアンヴィヴァレンツへの見直し。ムシルの小説を「嫉妬」という概念を土台とする構造という視点から解読する試み。ワ-グナ-の『アンチゴネ-』解釈を手掛りとした、その女性観の再評価。ジンメルの女性論を「都市文化論」のコンテクストの内部で読み直す試み。カフカの物語において、叙述された現実のイメ-ジの彼方に作品の最終的な志向性として現れる女性像の読み取り。3.ヴァイマ-ル共和国・ナチス時代:Th.マンの『ヴェニスに死す』において、物語言語を根底から支える機能を帯びたナルシスとナルシシズムとの連関の回路の解明。同じ作家の『ファウストゥス博士』の構造の内部に現れる「母たち」の像と他者了解との関連性の解析。4.第二次大戦後:バッハマンの初期の詩に現れ、後に『さまざまな死に方』において結実するモチ-フ群を固有名詞と言葉との関係という観点から分析する試み。なお、年度後半からは「研究成果報告書(論文集」の出版に向けての準備が本格化し、分担者・協力者より11編の寄与を得た。これはまもなく刊行される予定である。
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Research Products
(18 results)
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[Publications] 柴田 翔: "快楽の近世と勤勉の近代ーゲ-テ-考" 学鐙. 88. 8-11 (1991)
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[Publications] 池内 紀: "カ-ル・クラウス「炬火」全922号" アスティオン. 4. 4-8 (1991)
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[Publications] 池内 紀: "モ-ツァルトとは何か(I,II)" 文学界. 418. 181-221 179-209 (1991)
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[Publications] 池内 紀: "世界文学気行" 広告批評. 6. 81-104 (1991)
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[Publications] 池内 紀: "ドイツ語圏書評紙誌" よむ. 8. 41-49 (1991)
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[Publications] 前田 良三: "『エフェメ-ル』ーパウル・ツェランのもうひとつのパリ" ユリイカ. 24. 110-117 (1992)
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[Publications] 谷川 道子: "ハムレット/オフィ-リアからメディアへーひとつの謎とき" ハムレットマシ-ンは可能かII. 15-24 (1991)
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[Publications] 識名 章喜: "ドイツ語圏における〈文学と技術〉ー問題設定のための覚書" 慶応義塾大学日吉紀要 ドイツ語学・文学. 13. 78-108 (1991)
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[Publications] 池田 信雄: "よそなるわたしージャン・パウルの異人としてのユ-モリストについてー" ドイツ文学. 87. 35-45 (1991)
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[Publications] 三宅 晶子: "商品における媚態と欲望ー浪費の現象学" is. 52. 30-33 (1991)
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[Publications] 鈴木 純一: "『ヴェニスに死す』におけるナルシスとナルシシズム" ドイツ文学. 87. 86-95 (1991)
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[Publications] 武井 隆道: "Kommunikativな読解授業の試み" ドイツ語教育部会会報. 40. 37-45 (1991)
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[Publications] 赤司 英一郎: "披かれた風景ームシルの『グリ-ジャ』について" Beitrage zur Gormanistik(IV) 浦野春樹教授退官記念論文集. 14-30 (1992)
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[Publications] 池内 紀: "開化小説集" 岩波書店, 320 (1991)
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[Publications] (共著)池内 紀: "ドイツ文学を学ぶために" 世界思想社, 280 (1991)
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[Publications] 谷川 道子,浅井 健二郎,内村 博信,水上 藤悦,三宅 晶子(共著): "感覚変容のディアレクティク" 平凡社, 384 (1992)
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[Publications] 臼井 隆一郎(共著): "『バッハオ-フェン論集成』 所収論文「記号の森の母権論」" 世界書院, 300 (1992)
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[Publications] (共著)Miho Matsunaga: "Was wir gemeinsam haben… In:Frauen in der Literaturwissenschft(書名)" Literaturwissenschaftliches Seminar der Universitat Hamburg., (1992)