寄生虫症における各種血清診断の比較研究

1991 Fiscal Year Annual Research Report

• Project/Area Number: 02304036
• Research Institution: Kyorin University
• Principal Investigator: 辻 守康 杏林大学, 医学部, 教授 (90033951)
• Co-Investigator(Kenkyū-buntansha): 竹内 勤 慶応義塾大学, 医学部, 教授 (00051847) ; 松本 慶蔵 長崎大学, 熱帶医学研究所, 教授 (40004767) ; 木原 彊 川崎医科大学, 医学部, 教授 (20068969) ; 小林 昭夫 東京慈恵会医科大学, 医学部, 教授 (20056477) ; 高田 季久 大阪市立大学, 医学部, 教授 (10046815)
• Keywords: 蠕虫性疾患 / 原虫性疾患 / 血清診断 / 精製抗原 / イムノブロット法 / 間接蛍光抗体法 / ELISA法 / 血清疫学調査

Research Abstract

本研究で扱った本年度の血清検査総件数は約1350検体である.好酸球増多などで寄生蠕虫症が疑われた545例の中何らかの蠕虫抗原が陽性であったのは175例(28.8%)であり.特に多いのはアニサキス61例および犬・猫蛔虫症40例であった.このうち眼科的に犬蛔虫症が強く疑われ,血清反応が陽性であった35例のうち免疫電気泳動が陽性を示したのは11例(31.4%),ELISAが陽性であったのは33例(94.3%)で,両法とも陽性であったのは9例(25.7%)であった.硝子体液で実施した場合にはより抗体価が高く診断的価値が高かった.なお精製蛋白抗血清を用いたウェスタンブロット(WB)により犬蛔虫と猫蛔虫の区別が可能であることも判明した.多包虫症40例ではWBで31例が完全型,9例が不完全型であり,不完全型の場合,初期病巣で抗原成分に対して産生される抗体の種類と量は多様であった。マンソン孤虫症ではELISAが特異性,感受性が良いことが証明された。一方原虫性疾患についてマラリアの患者血清を用いてWBにより抗原分子との反応を調べたところ,感染初期において47kD分子が強く提示され,回復後には急速に弱まる結果が認められた.トキソプラスマ症では慢性感染者のIgM抗体はイムノブロット法により分子量70,51,39,35kDの抗原が各患者共通して認められ,急性患者では39,9kDの抗原が共通的に認められた.IgG抗体は慢性患者で82,70,62,51,39,35kD抗原が認められ,42,41,30,27,6kD抗原は急性患者にのみ認められた.クリプトリスポリジウムの間接蛍光抗体法を用いて日本人成人116検体について調べたところ陽性率は49.3%であった.カリニ肺炎の循環抗原は116名中70名が陽性であった.奈良県下一農村でツツガムシの間接蛍光抗体法を行ったところ,175例中27例が陽性であった.

Research Products

• [Publications] 辻 守康: "1990年度の血清反応とその治療についての考察" Clinical Parasitology. 2. 15-16 (1991)
• [Publications] 辻 守康: "血清診断からみた寄生虫症の現状" 広島大学医学雑誌. 39. 253-263 (1991)
• [Publications] M.TSUJI: "Diagnosis for Pneumocystis carinii pneumonia" Asian Medical Journal. 34. 572-577 (1991)
• [Publications] 辻 守康: "日本における住血吸虫症の現状" 化学療法の領域. 7. 869-875 (1991)
• [Publications] 矢崎 康幸: "硫酸バロマイシンによる広節裂頭条虫症の治療" Modern Physician. 11. 880-884 (1991)
• [Publications] 矢崎 康幸: "消化器寄生虫疾患と内視鏡" 消化器内視鏡. 3. 1655-1666 (1991)
• [Publications] 木村 文治: "脳有鉤嚢虫症の国内感染の例ー本邦における感染の危険性についてー" 神経内科. 34. 632-638 (1991)
• [Publications] 天野 博之: "臨床医にとってのマラリア" 治療. 73. 2354-2358 (1991)
• [Publications] N.MIZUNO: "Further characterization of the excretory and secretory antigens of Trichinella spiralis muscle larvae" 寄生虫学雑誌. 40. 260-266 (1991)
• [Publications] 岡井 美恵子: "潰瘍性大腸炎を伴った陳旧性日本住血吸虫症のまれな1症例" 医学検査. 40. 1817-1820 (1991)
• [Publications] 渡辺 泰男: "北海道北見市で発見された糞線虫症の1例" Clinical Parasitology. 2. 54-56 (1991)
• [Publications] 吉田 晴恒: "肺・腸骨に転移を認めた肝多包虫症でアルベンダゾ-ルが著効を奏した1例" Clinical Parasitology. 2. 106-109 (1991)
• [Publications] N.OHTA: "Regulation of human T cell response to Schistosoma japonicum egg antigen by concomitant cellular and humogal mechanisms in vitro" Parasitological Reserch. 77. 54-58 (1991)
• [Publications] 荒木 恒治: "消化器寄生虫疾患の診断のコツ.好酸球増多などが手がかりに,生食習慣など問診を正確に,ー診断には免疫診断が有用ー" Medical Tribune. 1991. 19-20 (1991)
• [Publications] 荒木 恒治: "新しい治療薬ー広範囲駆虫薬ー" 治寮学. 25. 219-221 (1991)
• [Publications] 西山 利正: "Praziquantelによって駆虫しえた多数寄生の横川吸虫症の一例." 奈良医学雑誌. 42. 130-133 (1991)
• [Publications] 荒木 恒治: "消化器寄生虫疾患診断のコツ" 日本消化器病学会雑誌. 88. 1156-1158 (1991)
• [Publications] Y.TAKAHASHI: "An immunocytodremical analysis of a classーspecific antibody response against Trichinella apiralis in humans" Journal of Electron Microscopy. 40. 136-142 (1991)
• [Publications] 荒木 恒治: "寄生虫卵,寄生虫体の検査法と鑑別のポイントー主として糞便内に証明される蠕虫ー" Medical Technology. 19. 1005-1012 (1991)
• [Publications] 中谷 正: "肝嚢胞を合併した肝吸虫症の1例." 肝臓. 31. 1123-1128 (1991)
• [Publications] 石川 裕司: "多包虫症の化学療法に関する臨床的検討ー動物実験との対比を含めてー" Clinical Parasitology. 2. 110-114 (1991)
• [Publications] 渡辺 晴司: "Pseudoterranova decipiensによる巨大な胃Vanishing tumorの1例" Clinical Parasitology. 2. 115-116 (1991)
• [Publications] 齋藤 寛之: "岩内町における胃アニサキス症" Clinical Parasitology. 2. 119-120 (1991)
• [Publications] 木原 彊: "内科医からみた寄生虫疾患診断と治療の問題点" Clinical Parasitology. 2. 8-14 (1991)
• [Publications] 木原 彊: "ジアルジア症" 治療. 73. 2377-2379 (1991)
• [Publications] 増田 剛太: "日本人に発症した2例のクリプトスポリジウム症" 感染症雑誌. 65. 1614-1619 (1991)
• [Publications] 福井 真由美: "間接蛍光抗体法によるクリプトスポリジウム症の血清疫学調査の試み" 寄生虫学雑誌. 40. 211-212 (1991)
• [Publications] 鈴木 守: "マラリア対策のための新しい技術開発とその理論" 化学療法の領域. 7. 1674-1676 (1991)
• [Publications] 狩野 繁之: "アマゾン川流域・日本人移住地におけるマラリア" 熱帶. 24. 232-237 (1991)
• [Publications] Y.SUZUKI: "Tumor necrosis factorーindependent protective effect of recombinant IFNーγ against acute toxoplasmosis in mice" Journal of Immunology. 147. 2728-2733 (1991)
• [Publications] Y.SUZUKI: "Toxoplasma antigens recognized by immunoglobulin M and G antibodies during acute and chronic infections in humans" 寄生虫学雑誌. 40. 446-450 (1991)
• [Publications] M.A.ORELLANA: "Role of beta interferon in resistance to Toxoplasma gondii infection" Infectious Immunology. 59. 3287-3290 (1991)
• [Publications] 鈴木 康弘: "感染急性期に特異的な抗体と反応するトキソプラズマ抗原の解析" Clinical Parasitology. 2. 17-18 (1991)
• [Publications] 小林 昭夫: "風土病的感染症ートキソプラズマ症ー" 治療学. 25. 177-179 (1991)
• [Publications] 川中 正憲: "住血吸虫症の病理" 化学療法の領域. 7. 893-899 (1991)
• [Publications] 太田 伸生: "日本住血吸虫症の免疫病理学的研究" 岡山医学会雑誌. 103. 133-143 (1991)
• [Publications] 神原 廣二 他: "寄生虫疾患の診断法の開発と症例検討" 医薬ジャ-ナル社, 234 (1991)
• [Publications] 上田 泰 他: "新薬物療法" メジカルビュ-社, 954 (1991)