1990 Fiscal Year Annual Research Report
スプレッドスペクトラム高度情報ワイヤレス通信モデムの研究
Project/Area Number |
02402034
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
坪内 和夫 東北大学, 電気通信研究所, 助教授 (30006283)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
益 一哉 東北大学電気通信研究所, 助手 (20157192)
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Keywords | スペクトラム拡散通信 / 無線通信 / ワイヤレスモデム / 微弱電波 / 弾性表面波 / コンボルバ- / AlN / RF IC |
Research Abstract |
高度情報化社会の進展には、通信技術の発達が必須であるが、特に「どこでも」、「いつでも」通信可能なワイヤレス通信機に対する要求はますます増大している。無線通信において、有線なみの高信頼性をもち、さらに移動する相手の位置決め機能(約数m)が付加されれば、このワイヤレス通信機は、FA、OA、HAなどにおいても、高度情報化社会の変革を与えるインパクトをもたらすと考えられる。 本研究では、高信頼度、かつプライバシ-保護、位置ぎめ機能を持つ、高速デジタルコ-ドでチャンネルとマルチ情報を識別できる「スプレッドスペクトラム(SS)高度情報ワイヤレス通信モデム」を開発する。 今年度から始まった新電波法の微弱無線電波輻射規制下では、VHF帯で120kHz幅あたり約0.05μW以下となり、従来のFM通信では到達距離が実質約8m以下になってしまうが、本開発のモデムでは、100m以上有効である。また、最近米国で認められたSS通信バンドの新しい活用を目指して、10km範囲のワイヤレスロ-カルネットワ-クを構築する。この通信技術の中心デバイスとして我々が開発してきた弾性表面波/半導体コンボルバ-を用いるが、さらに高度信号処理用の無線通信RF ICを開発し、超小型スプレッドスペクトラム高度情報ワイヤレス通信モデムを完成させる。 研究計画に従って、本年度は、スプレッドスペクトラム(SS)ワイヤレスモデムについて、以下に述べる「不意に飛来する妨害波除去方式」、並びに「AlN/SOS構造RF IC化の基礎開発」を行った。 (1)弾性表面波/半導体コンボルバ-を用いたSSモデムにおいて、不意に飛来する複数の妨害波を除去するDBM復調+フィルタ除去方式を開発した。実験並びにシミュレ-ションによりSS信号の電力スペクトラムの尖頭値より線スペクトルで80dB大きいCW妨害波が飛来しても通信可能であることを明らかにした。我々のSSワイヤレスモデムの総電力は、国内微弱電波規制下では、わずか約6μWであるが、4.8Wの妨害波が飛来しても通信可能である。さらに、遠近問題を解決するために、コンボルバ-の処理利得を生かしたBPSKータイムウィンドウ検波方式とDS/FSマルチチャンネルにより、希望局が100mで通信したときに干渉局が10mの位置にいても通信可能であることを示した。 (2)AlN/SOS構造RF IC化の基礎となるサファイア基板上のAlNエピタキシャル成長について、新たにガス-ビ-ムフロ-方式MOーCVD技術を開発した。従来圧電性の良好なAlNエピタキシャル膜は、1000℃以上の高温でないと得られなかったが、本技術により690℃の低温でも良好な圧電性を有するAlNエピタキシャル膜成長が可能となった。 以上、研究計画に沿って研究は進展しており、次年度以降の研究の見通しは立っている。
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[Publications] N.Mikoshiba and K.Tsubouchi: "Spread Spectrum Communication System for Highly Reliable Wireless LAN" Yagi Symposium on Advanced Technology Bridging the Gap between Light and Microwaves,(1990,Sept.25ー27,Sendai). 48-49 (1990)
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[Publications] S.Kaneko,M.Tanaka,K.Masu,K.Tsubouchi and N.Mikoshiba: ""Epitaxial Growth of AlN Film by Low Pressuer MOCVD in GasーBeamーFlow Reactor"," The 7th International Conference on Vapor Growth and Epitaxy,Nagoya,1991.(1991)
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[Publications] 坪内 和夫: "スペクトル拡散通信の応用とデバイス" 電子情報通信学会論文誌BーII. (1991)
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[Publications] 黒本 晋一、中瀬 博之、福井 健一、坪内 和夫、御子柴 宣夫、: "「SAWコンボルバを用いた非同期型SSモデムの耐妨害復調システム」" 電子情報通信学会 スペクトル拡散通信技術とその応用研究会. SSTA90ー25. 51-58 (1990)
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[Publications] 森 政治、竹内 慈、郷地 元博、坪内 和夫、: "「米国におけるSS無線モデムの実験」" 電子情報通信学会 スペクトル拡散通信技術とその応用研究会. SSTA90ー33. 113-120 (1990)
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[Publications] 皆川 昭一、坪内 和夫: "「SAWコンボルバを用いた非同期型SS通信モデム」" 1990年情報理論とその応用、暗号と情報セキュリティジョイントワ-クショップ講演論文集. 〈1990ー8〉. 173-182 (1990)
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[Publications] 中瀬 博之、黒本 晋一、福井 健一、坪内 和夫、御子柴 宣夫、: "「SAWコンボルバを用いたタイムウィンドウ検波方式によるスプレッドスペクトラム通信システム」" 電子情報通信学会 スペクトル拡散通信技術とその応用研究会. SSTA91. (1991)
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[Publications] 坪内 和夫、御子柴 宣夫、: "「弾性表面波コンボルバを用いた新しい通信方式」" 固体物理. 25(5). 48-54 (1990)
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[Publications] 田中 正則、金子 重治、黒本 晋一、中瀬 博之、福井 健一、坪内 和夫、御子柴 宣夫: "ガスビ-ムフロ-方式を用いた減圧MOCVD法によるAlN薄膜の低温形成" 平成2年秋季 第51回応用物理学学術講演会. 28a-SX-19 (1990)
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[Publications] 金子 重治、田中 正則、樋口 崇、中瀬 博之、福井 健一、岡田 幸之、南波 昭彦、坪内 和夫、御子柴 宣夫: "ガスビ-ムフロ-を用いた減圧MOCVD法によるAlNエピタキシャル成長(IV)" 平成3年春季 第38回応用物理学関連連合講演会. 31p-ZK-10 (1991)