1992 Fiscal Year Annual Research Report
生物体硬組織をつくるメソスコピック構造の機能的意義
Project/Area Number |
02404008
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
鎮西 清高 京都大学, 理学部, 教授 (70011517)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
前田 晴良 京都大学, 理学部, 助手 (10181588)
神谷 英利 京都大学, 理学部, 助手 (00115825)
清水 大吉郎 京都大学, 理学部, 講師 (60025327)
大野 照文 京都大学, 理学部, 助教授 (40194245)
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Keywords | カキ / トグロコウイカ / 石灰化 / 軽量構造 / 適応形態 |
Research Abstract |
カキの殻をつくる軽量構造の形態形成機構と機能について総括した。 形態形成機構:チョーク層やハニカムなどの軽量構造は、いずれも殻の内部の空隙を埋めていて、殻を分渉する表皮細胞から隔離した環境で晶出した。しかし、この構造形態は種ごとに独特で著しい秩序性がみられる。軽量構造のうち、ハニカムや樹状で、成長線らしいものがみられるタイプは、生物体が分泌する薄膜あるいは糸状の物質(有機物)を鋳型として、その表面に炭酸塩の結晶成長が起こったものであろう。ハニカム構造は、有機薄膜からなる泡が、その側面で石灰化を起しながら成長していくと考えると理解できる。これを連続バブルモデルとよぶ。 軽量構造の機能的意義:この構造は、(1)軟らかい泥の干潟上に浮いて生活するための殻の軽量化、(2)軽く経済的な詰め物として、殻内部に沈積して内部を整形し、成長速度を調節し、環境に応じて外部形態を変化させる。(3)厚い殻で軟体部を包み、穿孔性の捕食者、寄生者の害を防ぎ殻の強化に役立つ、など多様な機能をもつ。固着性でありながら固着できる基盤のない砂泥底に生活するカキには、5-6タイプの適応型があるが、1つを除いてみなこの構造があるために実現したタイプである。特異な1つの形質がいくつかの適応的意義をもち、それらを巧妙に組合せて、軟底におけるカキの多様な適応型を生みだしていることがわかった。 この他、本年度には、トグロコウイカの連結細管について観察をおこなった。細管の基部にある篩状構造も、有機薄膜によって生物体から隔てられた閉空間で石灰化が起っていることを確認した。また石灰化が起る前にこの膜が、コウイカの浮力調節に重要な役割を果していると考えられた。
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