Research Abstract |
心肺移植や肺移植後の急性拒絶反応と肺感染の鑑別方法を確立する目的で,ラットの肺移植モデルを用いて,肺組織の単核細胞亜集団を免疫組織化学的に分析した。【方法】MHCの異なる系(BN/LEWラット)で,同所性左肺移植30匹を行ない,免疫抑制せず,2,4,6日後に移植肺を摘出した。対照群はLEW/LEW同系移植30匹である。マイコプラズマ・プルモニス感染モデルの急性肺炎8匹,慢性肺炎6匹を感染群とした。使用したモノクロナル抗体は,ED1:単球/マクロファ-ジ(Mφ),ED2:活性型Mφ,OX19:Tリンパ球,W3/25:ヘルパ-T細胞,OX8:サプレッサ-T細胞,OX12:Bリンパ球。【結果】1.異系移植は全例急性拒絶反応を発症し,2日目の軽度拒絶反応から6日目の高度拒絶反応へ進行した。2.急性拒絶反応で血管や気管支周囲に浸潤する単核細胞は,移植後2ー4日間では,活性型および非活性型Mφが大部分で,T°Bリンパ球も4,6日目に増加した。6日目の高度拒絶反応では,肺胞間質にもこれらの細胞が浸潤した。3.Tリンパ球サブセットのうちヘルパ-T細胞は,2ー4日目に血管および気管支周囲に浸潤を開始し,サプレッサ-T細胞は4ー6日目と,やや遅れて浸潤してきた。両者の組織内分布にはとくに相違はみられなかった。4.マイコプラズマ感染モデルは,全例肺炎を発症した。血管や気管支周囲には,活性型・非活性型Mφやヘルパ-T細胞の中等度〜高度の浸潤を中心に,サプレッサ-T細胞,B細胞も軽度〜中等度に増加した。5.肺感染では,同一標本内でも,組織部位により細胞浸潤の程度に差が著しいのに対して,拒絶反応では全肺で同時に同程度に進行する血管や気管支周囲の同心円状の細胞浸潤が特徴的であった。【結語】ラットの肺移植後急性拒絶反応とマイコプラズマ肺炎の比較では,細胞浸潤の程度や組成はほぼ同様であったが,肺組織内の分布に差異がみられた。
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