1991 Fiscal Year Annual Research Report
古代金属生産の地域的特性に関する研究ー山陰地方の銅・鉄を中心としてー
Project/Area Number |
02405007
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Research Institution | Shimane University |
Principal Investigator |
田中 義昭 島根大学, 法文学部, 教授 (70144681)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
伊藤 晴明 島根大学, 理学部, 教授 (80032423)
大西 郁夫 島根大学, 理学部, 教授 (40032445)
徳岡 隆夫 島根大学, 理学部, 教授 (30025358)
橋谷 博 島根大学, 理学部, 教授 (00156267)
井上 寛司 島根大学, 法文学部, 教授 (40027967)
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Keywords | 古代金属生産(銅と鉄) / 出雲市矢野遺跡 / 玉ノ宮製鉄遺跡群 / 箱形炉 / 精錬と鍛治 / 砂鉄 / 皮吹子 / 熱残留磁気測定 |
Research Abstract |
平成3年度の研究は,初年度に引続いて古代金属関係遺跡の発掘調査を継続することと研究を総括して報告書を作成することであった。まず銅・青銅器生産関連の遺跡として出雲市矢野遺跡の第1地点を発掘した。この調査では銅・青銅器生産を直接裏づける資料はえられなかったが,焼土・炭を含包する弥生中期の層を確認したことと前回銅の溶物らしい遺物を採集(第3地点)していることもあって今後の精査を期待している。山陰地方全体では岩吉遺跡(鳥取市)において銅滓らしき遺物が出土しているが,それ以外には考古遺物としては未発見。ただ文献や山口県における遺跡調査等を参考にすれば,山陰の銅生産(青銅器鋳造も含めて)は7〜8世紀代には確実に行われたとしてよい. 鉄生産については玉湯町玉ノ宮地区の製鉄遺跡の調査を引き続いて実施、かなり大形の炉床を検出した。平安時代のものである。これにより玉ノ宮では奈良→平安にかけて小規模なたたら製鉄が断続的に行われたことが判明した。溶鉱炉はいずれも箱形系統とみられる.鳥取市岩吉遺跡では5世紀代の精錬滓と鍛冶滓が出土し,すでにこの頃から製鉄ー精錬ー鍛冶の分化過程が成立していることを示した。しかし製鉄が砂鉄利用の現地生産となるのは6世紀後以後のことで,それも広く普及するのは7世紀代になってのこととみられる.鉄生産(古代)の復原的研究については文献,民俗,従来の実験研究を検討し,皮吹子の踏ふいごが適しているとの結論に達した. 報告書作成はI=総論,II=古代金属生産遺跡の調査,III=自然科学研究(鉄生産炉体分析,残留磁気測定),III=山陰地方古代金属生産の諸問題のI〜III章立でまとめた.
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