1992 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
02451057
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
田島 毓堂 名古屋大学, 文学部, 教授 (20082349)
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Keywords | 法華経 / 訓読 / 訓読史 / 漢字訓 / 為字訓 / 和訓 / 仮名書き法華経 |
Research Abstract |
本年も前二年に引き続いて資料の調査及びその整理研究を行った。その中で、平成四年秋期訓点語学会(大分文化会館)において「日光山天海蔵法華経についてー為字訓を中心にー」と題して口頭発表を行った。本書は高麗版本1288に訓点が書き込まれてゐるもので、十四世紀末から十五世紀初頭の訓点があり、その点でも貴重であるが、平安古点にあり近世日遠関係資料、宗淵関係資料にともに見出される為字に対する漢字訓がみられ、それによる為字和訓が見出される。中世資料としては、他に防府天満宮本巻一二にあるものと本書のほかは未紹介である。今後更にその発見が期待されるが、従来全く中世に途絶えてゐたものが見出されたのは重要である。防府天満宮本は検討が未了であるが、上記のごとき点もあり、これも貴重な資料である。日光山輪王寺所蔵本の中には、上記以外に、多くの装飾経に混じって、光明皇后筆と伝へるものがあり美術史家によれば、確かに光明皇后の雰囲気があると言はれるが、恐らくは院政期書写の本であり、詳細な訓点が施され返り点も一二から十、二十に及ぶものがあり、特異な訓読方式を持ってゐる。これについては十分な研究は未了であるが、興味ある資料である。一方に仮名書き本についても未紹介のものが知られ、この方面の研究を続けてゆく必要を強く感じた。研究補助金の年限は今年度までであるが、当初の予想通り、法華経資料は多量にあり、未調査のものが多い。当然のことながら、期間内に得た資料及び所在の知れたものにつき、引続き調査研究の必要を感じるので、続行する所在である。
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[Publications] 田島 毓堂: "法華経為字和訓考ー資料篇(六)ー" 名古屋大学文学部研究論集. 文学39. 211-238 (1993)
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[Publications] 田島 毓堂: "妙一記念館本仮名書き法華経における為字訓ー為字和訓考の一環としてー" 妙一記念館本仮名書き法華経 研究篇(仏乃世界社). 113-142 (1993)
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[Publications] 田島 毓堂: "語彙論的語の単位試論ー意味単位と分類単位とー" 日本語論究 2 古典日本語と辞書(和泉書院). 2. 57-97 (1992)
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[Publications] 田島 毓堂: "語彙論的語の単位ー意味単位と分類単位とー" 文化言語学ーその提言と建設ー(三省堂). 694-668 (1992)
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[Publications] 田島 毓堂: "語彙指標ー語彙の数量的側面と語彙研究への視点ー" 日本語研究と日本語教育(名古屋大学出版会). 95-114 (1992)
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[Publications] 田島 毓堂: "語彙論の課題ー集団的規範と個別的実現ー" 名古屋大学国語国文学. 71. 1-13 (1992)