Research Abstract |
(1) 地殻変動記録からの異常信号の検出の試み 伸縮計,傾斜計,水管傾斜計などの地殻変動記録は,超長周期までレスポンスが平担で,しかも連続収録しているために,非常にゆっくりとした地殻内の変形を取り出すのに適している。今回は,異常検出のフィルタ-を設計して,1990年,1991年の2年間にわたる防災研究所の3カ所の地殻変動の記録の解析を行った。第一ステップとしての異常信号は数多く検出されたが,これらの多くは気象ノイズ(気温・気圧の変化)によることが判明した。更に,ノイズ除去作業を行った結果,すべての検出された“異常信号"は,地球内部に原因するものでなかった。この研究では,深発地震より更に深い部分に起り,たぶん異常にゆっくりとした地震であろう“超深発地震"の検出,および地殻内や,サブダクション地域で起るであろう“ゆっくりとした地震"の検出を試たが,少くともこの2年間では,中部・近畿地方では発見することはできなかった。この種の歪変化は,10^<-8>〜10^<-9>程度と思われ,現在の計測システムで充分に検出可能な量であるが,極めてまれな現象であると思われる。結果は,ネガティブなものであるが,今後の地球内部の変形,地震予知研究の上でも重要な示唆を投げかけている。つまり,もしこの種の変化が検出されたとしたら,それはかなり異常な変動であり,大きな現象の前兆と考えられるからである。 (2) 低周波地震の研究 低周波領域の変動が卓越する現象には,上記の他に,低周波地震も挙げられる。今年度は,低周期微小地震に絞ってeventの検出を試た結果,11年間に12個の地震が見つけられた。この種の地震の出現率は東北地方と比べ,1/20程度と小いさく,火山活動との関連から,マグマの輸送量に関係するものであろうと推察されている。
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