1992 Fiscal Year Annual Research Report
南北両極の雪氷コアを用いた過去1000年の気候・環境システムの変動に関する研究
Project/Area Number |
02452060
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Research Institution | National Institute of Polar Research (N.I.P.R.) |
Principal Investigator |
渡辺 興亜 国立極地研究所, 研究系, 教授 (60111861)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
神山 孝吉 国立極地研究所, 研究系, 助手 (70135507)
本山 秀明 国立極地研究所, 研究系, 助手 (20210099)
藤井 理行 国立極地研究所, 研究系, 助教授 (20125214)
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Keywords | 雪氷コア / 気候変動復元 / 地球環境変動復元 / 雪氷コア解析 / 南極氷床 / 北極域 / 火山灰年代 / 気候・環境シグナル |
Research Abstract |
南北両極域地域の雪氷のコアについて、基本的な示準(年代)、示相(気候・堆積環境)要素を設定し、分析および解析研究を行なった。南北両極のさまざまな地域における堆積環境の特性を明らかにするには(i)解析方法の基準化と(ii)年代決定方式の共通化が必要であり、本研究ではその確立を第一の目的とした。示準、示相要素は多様であり、また年々新しい要素が発見されている。そこで本研究では方法的に確立した解析、分析項目を主体に、示準・示相要素を三群に分けた。示準要素としては(堆積速度、電気伝導度、放射性同位元素)を選び、氷床流動モデルからの理論年代を、火山起源物質や人工放射性物質が示す絶対年代基準面で補正する方法でコア年代を求めた。示相要素Iとしては安定同位体組成(酸素同位体組成)により気温、降水量変化を、示相要素IIとし海塩主成分、微粒子組成、人為起源物質の量比変動により環境変動を求めた。得られた示相要素の鉛直分布を得られた年代尺度によって相互対比する方法により、南北両極の雪氷コア中に示されている過去数100年間の気候・環境システムの変動の復元を試みた。本研究では、特に北極域での雪氷コア研究で年代決定に重要な役割を果たす火山活動シグナルによる絶対年代決定の方法を南極雪氷コアに導入することを主眼においた。直流電気伝導度法や、誘電率プロファイル法によって南極コアについての多数のデータを得たが、南極氷床特有の堆積過程特性(堆積中断現象、降水量の大きな年々変動など)のためにその解釈には多くの問題点が残された。しかし本研究によって南極雪氷層中に年代については未知ではあるが多数の火山活動シグナルが見出され、北極域コアとの対比によって今後の発展が期待できる。タンボラ火山(1815年)や未知火山(1601年)のシグナルはその特有なシングル形状より、南極においてもほぼ確定した示準面となりつつある。
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Research Products
(8 results)
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[Publications] K.Kamiyama,Y.Fujii O.Watanabe and T.Yamada: "Electrical Conductivity and pH in Snow and Ice Samples from Various Glacier Area" Antarctic Record. 34-2. 119-129 (1990)
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[Publications] K.Kamiyama,O.Watanabe and E.Nakayama: "Atmospheric Conditions Reflected in Chemical Components in Snow over East Queen Maud Land,Antarctica" Proceedings of the NIPR Symposium on Polar Meteorology and Glaciology. 6. 88-97 (1992)
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[Publications] T.Suzuki and Y.Fujii: "Vertical Profile of ^<210>Pb in an Ice Core from the H phi ghetta Ice Dome in Spitsbergen" Proceedings of the NIPR Symposium on Polar Meteorology and Glaciology. 6. 84-88 (1992)
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[Publications] 渡辺 興亜: "氷床コア中の気候・環境シグナルはどのように形成されるか" 地学雑誌. 100. 988-1006 (1991)
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[Publications] 渡辺 興亜 他: "極域の雪氷コアから過去の環境を探る" 日経サイエンス. 6. 108-118 (1991)
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[Publications] 渡辺 興亜: "氷床コアによる気候変動" 科学. 61. 635-639 (1991)
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[Publications] K.Kawamura,K.Yokoyama and Y.Fujii: "Vertical Profiles of Total Organic Carbon and Polar Organic Compound in the Ice Core from Site J,Greenland" Proceedings of the NIPR Symposium on Polar Meteorology and Glaciology. 6. 99-105 (1992)
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[Publications] A.Mitani,H.Shoji and Y.Fujii: "Ice Layer Observations in the G6 Antarctic Ice core" Proceedings of the NIPR Symposium on Polar Meteorology and Glaciology. 5. 140-144 (1992)