Research Abstract |
1.岩崗岩の主要構成鉱物である石英および長石には,微細な流体包有物が含まれている。これらはすべて二次包有物で,癒着したマイクロクラック面に配列している。稲田花崗岩中の流体包有物の大きさは,ふつう10μm以下であるが,まれに30μmに達するものがある。石英中の流体包有物の形状は不規則〜中間型で,完全な負型のものは認められない。長石中のものは主に負型〜中間型で,不規則型のものは少ない。 2.流体包有物を含む癒着マイクロクラック(流体包有物面)およびその形成後に生じた未癒着のマイクロクラックは,異種鉱物が接している場合には,ほとんど粒内にとどまっているが,同種鉱物が接する場合は粒界を越えて延びていることが多い。流体包有物面と未癒着のマイクロクラックは,それぞれ優先方向があるが,両者は一般に斜交している。 3.流体包有物は,常温では気液2相であるが,均質化温度以上に加熱すると,流体の圧力が急激に上昇して,マイクロクラックが生じ,破壊する。加熱顕微鏡下で測定の結果,稲田花崗岩の石英の均質化温度は120〜230℃,長石は150ー215℃の範囲にある。破壊温度は,流体包有物の均質化温度,大きさ,形状,配列状態,鉱物の強度,薄片の厚さなどに支配されるが,石英では205〜550℃,長石では220〜450℃の範囲にある。流体包有物の加熱により生じたマイクロクラックは,石英ではC軸に垂直に延びるものが多い。 4.繰返し加熱ー冷却実験(同一ピ-ク温度とピ-ク温度逐次上昇の2種類)による冷却後の残留ひずみの検討の結果,加熱ピ-ク温度が高いほど残留ひずみが大きく,その増加率も大きい。同一ピ-ク温度の繰返し加熱実験では,400℃までは2回目以降新たな残留ひずみの発生はわずかであるが,ピ-ク温度がこれより高くなると顕著になる。残留ひずみは,主に鉱物の熱膨張に伴うクラックの開口によるものである。
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