1990 Fiscal Year Annual Research Report
有機金属ラジカル及び電荷移動錯体の極低温における特異な磁気的相互作用の研究
Project/Area Number |
02453012
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
徂徠 道夫 大阪大学, 理学部, 教授 (50028172)
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Keywords | 有機強磁性体 / 有機ラジカル / 有機金属錯体 / 磁化率 / 熱容量 / 相転移 / 磁気的相互作用 / 電荷移動錯体 |
Research Abstract |
本研究課題の目的は、有機金属ラジカルや電荷移動錯体等の極低温磁化率を精密に測定し、研究室既設の極低温熱量計による熱容量測定による熱力学的研究と組合せることにより、特異な磁気的相互作用を明らかにすることである。 1.磁化率測定には高感度のSQUIDを採用し、^3Heクライオスタットを用いて0.3〜300K温度領域で作動する装置を試作した。開発途上のDCーSQUID検出器を発注した為、納期が遅くなり、装置の立上げが予定より大幅に遅れているが、平成3年度初期に完成の予定である。 2.電荷移動型分子性強磁性体であるデカメチルフェロセニウムTCNE及び反強磁性体であるデカメチルフェロセニウムTCNQ塩の熱容量測定を行い、前者では4.74Kに強磁性相転移を、後者では2.54Kに反強磁性相転移を見い出した。従来、有機ラジカルにおける磁気的相互作用は等方的なハイゼンベルク型とされていたが、g値の異方性との関連で、異方的なイジング型であることを明らかにした。 3.純粋な有機ラジカルであるニトロキシルラジカルを有するメタクリル酸エステルの熱容量測定を行い、0.14Kに強磁性相転移を見出した。結晶構造からは判明しにくい一次元的強磁性相互作用が存在することを明らかにした。 4.分子性錯体であるMnCu(obbz)・H_2O及びMnCu(obbz)・5H_2O結晶の熱容量測定を行い、前者については16Kに、後者については2.3Kにそれぞれ強磁性及び反強磁性相転移を見出した。 5.平成3年度では、これら有機強磁性体及び反強磁性体の磁化率測定を行うと共に、新たに分子強磁性体や高分子磁性体の磁化率測定及び極低温熱容量測定を行い、特異な磁気的相互作用を解明する予定である。
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Research Products
(6 results)
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[Publications] M.Nakano: "Heat capacity of the ferromagnetic molecular chargeーtransfer complex,decamethylferrocenium tetracyanoethenide:Isingーlike property of the magnetic interaction" Chem.Phys.Lett.169. 27-30 (1990)
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[Publications] H.Sugimoto: "Organic ferromagnetism of 4ーmethacryloyloxyー2,2,6,6ーtetramethylーpiperidinーlーoxyl and antiferromagnetism of 4ーacryloylowyー2,2,6,6ーtetramethylーpiperidineーlーoxyl" J.Chem.Soc.,Chem.Commun.(1991)
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[Publications] K.Inoue: "Ferromagnetic phase transition in the mixedーmetal dinuclear complex,MnCu(obbz)・H_2O" J.Phys.Chem.Solids. (1991)
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[Publications] M.Nakano: "Ferromagnetic and antiferromagnetic molecular chargeーtransfer complexes,[Fe(C_5(CH_3)_5)_2]TCNE and [Fe(C_5(CH_3)_2]TCNO" J.Phys.Chem.Solids. (1991)
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[Publications] K.Inoue: "Antiferromagnetic phase transition in the mixedーmetal dinuclear complex,MnCu(obbz)・5H_2O" J.Phys.Chem.Solids. (1991)
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[Publications] M.Sorai: "Heat capacity and phase transition of the spinーcrossover comlex,[Cr(depe)_2I_2]" J.Phys.Chem.Solids. (1991)