1990 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
02453037
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
齋藤 太郎 東京大学, 理学部, 教授 (90011006)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小林 昭子 東京大学, 理学部, 助手 (50011705)
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Keywords | 金属クラスタ-錯体 / シエブレル相 / モリブデン |
Research Abstract |
当研究はシェブレル相類似の金属クラスタ-骨格を有する伝導性化合物を低温における溶液反応によって合成することを目的とした。このためにクラスタ-化合物中のμーS_2配位子から配位性のない無機試薬により硫黄原子を引き抜く新反応の開発を目論んだ。 ジスルフィド配位子を有する化合物としてよく知られる(NH_4)_2[Mo_3S(S_2)_6]1とNa_2SO_3を水溶液中で反応すると、黒色の生成物を得た。室温反応の生成物は絶縁体である。還流下反応の生成物はわずかに電気を通す。この化合物を300℃で5時間加熱した試料は半導体であった。これらの結果は、亜硫酸イオンによって、1のμーS_2配位子から硫黄原子引き抜き反応がおこり、モリブデン3核クラスタ-単位が重合したことを示すものと思われる。 硫酸銅共存下に同様な反応をおこなうと、半導性を示す非晶質黒色生成物が生成する。700℃に加熱すると黒色単結晶が成長する。これは金属伝導性を示すが、ICP分析の結果、モリブデンを含まないことが明らかになった。単結晶X線構造解析の予備実験として、プリセッションおよびワイセンベルグ写真を検討したところ、極めて特異な消滅則を示すので、長期間にわたり構造が不明であったが、この化合物は8個の既知銅硫化物のうち、digeniteと呼ばれるCu_9S_5であることがほぼまちがいないことが判明した。通常は銅単体と硫黄単体を9:5の比率で反応させることにより生成するが、構造は完全には解析されていない化合物である。当研究の反応条件下にこの化合物が選択的に生成する機構については検討中である。
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Research Products
(1 results)
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[Publications] T.Saito,N.Yamamoto,T.Nagase,T.Tsuboi,K.Kobayashi,T.Tamagata,H.Imoto,K.Unoura: "Molecular Models of the Superconducting Chevrel Phases:Syntheses and Structures of [Mo_6X_8(PEt_3)_6] and [PPN][Mo_6X_8(PEt_3)_6] (X=S,Se;PPN=(Ph_3P)_2N)" Inorgic Chemistry. 29. 764-770 (1990)