Research Abstract |
多くの遷移金属酸化物は酸素不定比組成を示す.その変化にともない,電子物性,反応性などが大きく変わる.一方,酸化物上に吸着した酸素は酸化物の触媒能を左右するほか,表面近傍の電子状態にも影響を与え,酸化スズガスセンサ-などの形で応用されている.然るに,酸化物格子内から出入りする不定比酸素と表面に吸着した酸素を分離定量することが困難であるため,従来酸化物上に酸素がどの様に吸着するかを吸着平衡の立場から定量的に明らかにした研究は無い.本研究では,導電性酸化物,電極材料,センサ-材料などとして注目されている酸化スズ,安定化ジルコニア,およびペロブスカイト型酸化物La_<1-x>Sr_xMO_3(M=Co,Mn,Fe)に着目し,表面積の大きく異なる試料について平衡重量が温度,雰囲気酸素分圧によってどの様に変わるかを熱天秤で精密測定することにより,酸素不定比量と吸着酸素を分離定量し,酸化物上への酸素吸着がどのような形で起こるかを明らかにすることを目的とする. 計画初年度に当たる本年度は,理論面の整備と測定装置の整備,試料作成を中心に研究を進めた.理論面については,ラングミュア吸着等温式の温度微分式と固体内の欠陥平衡式を組み合わせることによって,本研究代表者が他の共同研究者と過去に測定した酸化スズ微粉体についての酸素分圧,温度による重量変化測定の結果を詳細に解析した結果,酸素スズ表面の吸着酸素量,微分吸着熱,格子内の不定比酸素量,欠陥平衡定数などを定めることに初めて成功した.この研究を更に継続するための装置整備は,熱天秤系の精度を上げるための調整を残してほぼ完了した.また,安定化ジルコニアについては,1000℃以上で焼成し,なおかつ20m^2/gの表面積を有するものが作製され,800℃程度以下の温度における酸素吸着の状態を精密測定することが可能な段階に到達した.現在,熱天秤系の調整を進め,本格測定にはいる準備中である.
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