Research Abstract |
(1) 野外調査研究:南西諸島の屋久島,奄美大島,徳之島などの照葉樹原生林において,11月に現地調査を行なった。また,昆虫材料を採取して,実験室に持ち帰り実験に供した。 (2) DNA分析:クチキゴキブリ,オオシロアリから個体ごとに高分子DNAを抽出する方法は確立できた。オオシロアリでは,アリのフィンガ-プリントで用いるプロ-グ(アリのミニサテライトDNA)がクロスハイブリダイズするので,これを使用してオオシロアリのミニサテライトDNAのクロ-ニングを行なっている。 (3) アロザイム分析:アロザイム分析用機器を用いて,屋久島産のオオシロアリの12個の創設期コロニ-および12個の成熟コロニ-に関して,12個の酵素を取り出し,その酵素多型を調べたところ,多型が認められたのはエステラ-ゼのみであった。なお,他の産地のものでは,LDH,SDH,MDHー2でも多型が認められている。これらのデ-タから,今まで世界的にもほとんどデ-タが出されていないコロニ-内の血縁度に関して計算した。一方,冷凍試料として保存されている南西諸島の種子島,屋久島,中之島,奄美大島,徳之島からの56コロニ-,中国の浙江省,湖南省,広東省からの4コロニ-に関してアロザイム分析を行った。アイソザイム遺伝子座多型の頻度から計算した遺伝的距離によると,南西諸島内の5島,中国の湖南と広東省,中国の浙江省の3つにクラスタ-化された。これらは李(1988)の形態による分類の結果を支持するが,種レベルほどの分化ではなく,亜種レベル程度の分化であると考えられた。
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