1992 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
02454019
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
芦田 正明 北海道大学, 低温科学研究所, 教授 (50012422)
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Keywords | 昆虫 / 生体防御 / セクロピン / 外骨格 / クチクル / 脂肪体 / 血液 |
Research Abstract |
昆虫のカビやバクテリアなど微生物に対する生体防御反応は、これまでほとんど血液内で起る反応が研究対象とされてきた。血球細胞による貧食や被のう形成、脂肪体や血球で合成されて血漿中に放出される抗菌性ペプチド(セクロビンなど)が生体防御機構において主要な役割を演じていると考えられている。現在も、これらについては国内はもとより、外国でも活発に研究が行われている。昆虫など節足動物は外骨格を持っている。この外骨格が体内の諸組織と外界とをへだてていることを考えると、生体防御反応の第1線は外骨格にあると看るのが自然である。この立場にたつと今までの昆虫生体防御反応についての研究が血液にのみ注目して行われてきたのは驚くべきことである。平成4年度の本研究課題では、昆虫外骨格の生体防御における役割いついて集中的に研究を行い、以下に記すような成果を得た。昆虫(家蚕幼虫)の外皮を表皮細胞に傷をつけないように、細いサンドペーパーで軽くこすり、その部分にバクテリアの細胞壁成分(リポポリサッカライドあるいはペプチドグリカン)を途布すると、クチクルと血液内に抗菌性ペプチドが出現した。途布したりポポリサッカライドやペプチドグリカンは直接表皮細胞の表面に接触しないだろうことは電題レベルの観察で確認した。抗菌性ペプチドはセクロピン型のペプチドであることを精製したペプチドの一次構造解析により確認した。傷害部位に細菌細胞壁成分を途布すると表皮細胞と脂肪体でセクロビンmRNAのde novo合成が確認された。以上の実験結果は昆虫外皮にバクテリアの細胞壁成分を認識し、その認識シグナルを表皮細胞や、体内の脂肪体に伝える仕組みが存在することを示している。この発見は、旧来の外骨格が単なる物理的障壁として生体防御機構に加わっているとする考え方を根本からくつがいさなければならない革新的な成果である。
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[Publications] Ochiai,M.and Ashida,M.: "lmmunocytochemical localization of β-1,3-glucan recognition protein in the silkworm,Bombyx mori." Cell & Tissue Research. 268. 431-437 (1992)
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[Publications] Brey.P.T.et al.: "Role of The integument in insect immunity:Epicuticrlar abrasion and induction of cecuopin synthesis in cuticular epithirial cells." Proc.Nath.Acad.Sci.U.S.A.(1993)
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[Publications] Asida,N.and Sasaki,T.: "A target protease of sepins in insect hemolymoh is an endogenous protease of proohenoloxidase cascade." Insect Biochem.and Molec.Biol.(1993)
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[Publications] 芦田 正明,土谷 正和: "昆虫の特異な生体防御反応系と利用技術" ブレインテクノニュース. 31. 1-5 (1993)
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[Publications] 名取 俊二 他: "無脊椎動物の生体防御" 学会出版センター, 287 (1992)