Research Abstract |
北海道大学農学部付属苫小牧地方演習林の広葉樹林および針葉樹林,同天塩地方演習林の針葉樹林およびササ草地,苫小牧市植苗の牧草畑に観測施設を設けて降雨,林内雨,土壌溶液および河川水・地下水の各種イオン濃度を測定するとともに,土壌ー植物系における窒素,硫黄,アルカリ・アルカリ土類金属イオン等の現在量ならびに収支を測定した. 苫小牧における観測結果に依れば,降雨のpHは平均4.9(最高6.4〜最低4.1)で,同4.5以下の強酸性降雨の頻度も15%以上にのぼった.広葉樹林では,樹冠および落葉堆を通過するさいに顕著なpH上昇が認められ,鉱質土壌に侵入する段階では,pHは概ね6.0以上に達していた.これに対し,針葉樹林では,樹冠を通過するさいのpH上昇が少なく,落葉堆の酸性の影響と相伴って,A層のpHが4.0から5.2の低い値で経過し,C層に至って始めて6.0を超えた.両地点とも,土壌溶液pHは,春期(5ー6月)に低い値を示し,積雪の形で蓄積された酸物質が生態系内部の酸性化をもたらしている可能性が認められた.また,新葉展開期には,土壌中の硝酸態窒素濃度が高まる傾向にあった.この地点の物質収支を推定した結果,外部から供給される酸物質の影響は,生態系内部でほぼ完全に除去されており,主としてCaー重炭酸緩衝系がこの機能を担っていると推定された.また,Ca以外の主要金属イオンは収字がほぼ釣り合っており,窒素と硫黄は土壌ー植物系の内部に蓄積されていることがわかった. 天塩における観測結果は,苫小牧に比べて降雨のpH高く,したがって外部からの影響に対する生態系の緩衝機構は明瞭ではなかった.ただし,針葉樹林とササ草地の林内雨,土壌溶液pH,イオン組成ま明らかに異なり,土壌ー植物系の影響は明らかであった.植苗の人工草地に関する情報は,現在のところ限られたものであるが,施肥の影響が顕著で,酸性降下物等の影響は検出できない可能性がある.
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