1991 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
02454076
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
高橋 裕哉 北海道大学, 水産学部, 教授 (70001576)
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Keywords | 硬骨魚類 / ナイルテラピア / 抗精子抗体 / 精巣自己免疫 / 精子表面抗原 / 精子不妊化 / 魚類免疫グロブリンM |
Research Abstract |
1.ナイルテラピア(Oreochrmois niloticus)の精子を抗原として発現させた抗体はテラピアの精子に高度に特異的で、自己抗原と同定された6種類を含む15種類の精子原形質膜構成蛋白を表面抗原として認識した。これらの精子特異抗原は精巣血液関門が確立される精子変態末期に出現した。 2.成熟魚の精巣の外科的部分切除により自己の精子を体腔内に滲出させ、細胞性および液性の自己免疫反応を誘導できた。この際にフロインド完全アジュバント(FCA)を併用すると精巣の組織病理学的変化が増強されたが、その変化は輸精管系に限定されていた。 3.抗精子体の大量生産のための予備試験として、ウシ血清アルブミン(BSA)に対するテラピアの抗体の特性を分析し、テラピアの抗体がこの抗原に強い親和性を示し、その抗体がIgMとしての特性のみを持つことを確かめた。テラピアにBSA+FCAを腹腔内注射して得た抗血清によるBSAの強い沈殿が広範囲にわたって検出された。この沈殿にはIgMのみが関与していた。またこの抗体の抗原結合性が極めて高いことが確認された。 4.精巣物質により免疫された雄魚には、精子の凝集化と運動能低下を伴う受精能の顕著な減退がみられた。処理魚の血清から抗テラピア精子自己抗体を分離精製し、新たに考案したテラピア用人工精漿に抗体を加えて、その液で精子を一定時間処理した。結果として抗精子自己抗体より被覆された精子は受精能を顕著に低下させた。テラピア精巣に対する自己免疫誘導により生じた抗精子自己抗体は血液精巣関門の崩壊に伴って精巣内腔に侵入し、受精に関与するとみられる精子表面抗原と結合して精子の受精機能を阻害すると共に、精子凝集、セルトリ細胞の食細胞作用の活性化などの変化をも導くと結論された。
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[Publications] 婁 亜歓: "サクラクスOncorhynclzus masouの精子原形質膜の分離と部分特性分析(英文)" Comparative Biochemistry and Physiology. 95B. 187-192 (1990)
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[Publications] 婁 亜歓: "ナイルテラピアOreochromis niloticus抗体の物理的および化学的特性" American Zoologist. 30. 5A (1990)
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[Publications] 婁 亜歓: "定式抗精子抗体および自己抗体により示されたkナイルテラピアOreochromis niloticusの高度に特化した精子表面抗原(英文)" Journal of Experimental Zoology. 258. 255-262 (1991)