1990 Fiscal Year Annual Research Report
農畜産物の価格形成における品質格差の実態と要因に関する事例的基礎研究
Project/Area Number |
02454083
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
三島 徳三 北海道大学, 農学部, 助教授 (40002365)
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Keywords | 品質格差 / 価格形成 / 製品差別化 / 銘柄米 / 有機米 |
Research Abstract |
本研究は、農産物をめぐる消費の頭打ちのなかで、近年、産地および流通業界で強まっている品質競争の実態とその経済的含意にアプロ-チする基礎的研究の一環として、品質格差と価格形成の関係についての実態調査と事例分析を行うことを目的にしている。この研究課題の解明のため、平成2年度は米穀を対象に、産地調査と消費地調査、および課題に関係した資料収集と整理、統計的分析を行った。これらの調査研究を通じて、以下の諸点が新たな知見として得られた。 1.従来からの銘柄品種であるコシヒカリ・ササニシキに代わる新品種の開発が東北・北海道を中心に進められているが(北海道きらら397、青森つがるおとめ、秋田こまち、山形はなの舞い、など)、これらは中米クラスの需要をねらったもので、販売価格も比較的安い。 2.消費者の健康・安全ニ-ズに答えるねらいで、最近、少なからぬ産地で有機米・低無農薬米の栽培と産地直結販売の取り組みが進んでいるが、これには、製品差別化としての営業的側面と、農業本来のあり方を追及する運動的側面が対立している。 3.米穀をめぐる上記2つの新しい方向は、米の消費低迷と過剰、内外の自由化攻勢のなかで、産地および米流通業界が取り入れているマ-ケティング戦略として位置づけられる。したがって、新商品のイメ-ジ売り込みのみが先行し、品質の科学的裏付けとコストへの考慮が十分になされていない。 4.以上の結果、新品種米や有機米栽培に伴う生産者の追加的費用(労働費を含む)は、価格形成に十分に織り込まれていないことが事例的にも明らかになった。しかし、これが食糧管理制度の下にある米穀の特殊な事情によるものなのかどうか、次年度以降、青果物、食肉の実態調査を行うなかで、さらに詳しく分析していきたい。
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