1990 Fiscal Year Annual Research Report
配偶子および胚性幹細胞をベクタ-とする遺伝子導入動物作出に関する基礎研究
Project/Area Number |
02454091
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
豊田 裕 東京大学, 医科学研究所, 教授 (90050418)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
甲斐 知恵子 東京大学, 農学部, 助教授 (10167330)
片桐 拓也 東京大学, 医科学研究所, 助手 (70126100)
内藤 邦彦 東京大学, 医科学研究所, 助手 (20188858)
久和 茂 東京大学, 医科学研究所, 助手 (30177943)
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Keywords | 配偶子 / 胚性幹細胞 / 遺伝子導入動物 / 体外受精 / キメラ / 胚盤胞 |
Research Abstract |
1.配偶子による遺伝子導入の検討.C57EL/G×DBA/2F1マウスを用いて体外受精の条件下で遺伝子導入の可能性を検討した。DNAとしてpCH110プラスミドを用い,精子前培養あるいは受精用培地へ添加して受精卵への導入を調べた。その結果,Xーgal(5ーbromoー4ーchlsroー3ーindolylーβーDーgalactoーpyranoside)を基質とする染色においても,また,移植後の胎児におけるDNAのサザン法による分析においても,外来性DNAが導入された形跡は全く認められなかった。この結果から,少くとも通常の体外受精の条件下では,受精卵への外来性DNAの導入はきわめて困難であると考えられた。 2、胚性幹細胞の樹立に関する検討.胚性幹細胞を経由する遺伝子導入の条件を検討するために,初期胚からの胚性幹細胞の分離を試みた結果,C57BL/6L胚では成功しなかったが,129/SvJマウスの胚盤胞をマウス胎児由来の支持細胞上で培養することにより,2株の樹立に成功した。そのうち,一方の胚性幹細胞(A3ー1株)については,宿主胚盤胞へ注入してキメラ胚を作製し,その胚を偽妊娠雌マウスの子宮へ移植することによって一匹のキメラ雄マウスを得ることができた。このキメラ雄は正常アルビノ雌との交配によって,宿主胚の特徴を示す野生色の産子とともに,胚性幹細胞の特徴であるアルビノの産子を出産させることに成功した。この結果は,本研究で得られた胚性幹細胞が,広範囲な組織に分化し得るのみならず,機能的な生殖細胞へも分化し,胚性幹細胞由来の産子の作出の可能性を実証するものであり,遺伝子導入動物作出のための細胞として今後の研究に役立つことを期待させるものである。なお,今回分離された胚性幹細胞は,浮遊培養することにより胚様体を形成し胚体外胚葉,心筋様細胞を含む様々な細胞へ分化すること,および染色体分析の結果,高率に正二倍体の核型を保持していることも確認した。
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