1990 Fiscal Year Annual Research Report
肺血管床傷害の予防と治療のための血小板および白血球の膜受容体の解析
Project/Area Number |
02454239
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
長田 博 北海道大学, 医学部附属病院, 講師 (30164437)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
川上 義和 北海道大学, 医学部, 教授 (10001877)
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Keywords | ARDS / 呼吸不全 / DIC / プロテインC / PAIー1 / GpIIb / IIIa / 白血球 / TP80 |
Research Abstract |
ARDSを含む呼吸不全症例における血液凝固学的検査において、FDPの増加、アンチトロンビンIII(ATIII)とα_2PIの減少など血管内血液凝固を示す所見が認められた。フィブリノ-ゲンの増加している症例が多く、過代償性DICの病態を示したが、一部の症例ではフィブリノ-ゲンなどの凝固因子が低下し、非代償性DICに陥っていた。このような所見はARDS症例において著明であった。 ATIIIと共に重要な凝固阻止因子であるプロテインCは、呼吸不全症例において著明に低下しており、活性化された第V因子と第VIII因子に対する不活化作用が低下し、DICの増悪ならびに肺血管床傷害の要因の一つになり得ることが推測された。 血栓の溶解においては、組織プラスミノ-ゲンアクチベ-タ-(tPA)によってプラスミノ-ゲンがプラスミンに転換することが必要だが、tPAに対する阻止因子PAIー1が血管内皮細胞で産生される。呼吸不全症例の中には、PAIー1が高値を示す例があり、内皮細胞の傷害とそれに続く血栓溶解の障害が、呼吸不全の病態をさらに悪化させていると推測された。 上記のように呼吸不全と密接な関係にあるDICの発症において、凝固因子の活性化は血小板膜表面において急速に進行する。そして凝固因子の活性化は、血小板を活性化し、さらに白血球を活性化して、これらが複合して血管内皮細胞を傷害する。この過程において、血小板膜受容体の一つであるGPIIb/IIIaがフィブリノ-ゲンと統合して凝集するために重要な役割を果たしている。GpIIb/IIIaに対するモノクロ-ナル抗体TP80は、in vitroでADPによる血小板凝集を抑制することが認められ、本抗体を用いて血小板を介した凝固系の活性化と肺血管床傷害を抑制し得る可能性が推測された。
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